1月26日発表の厚労省の調査によると、我が国の外国人労働者数は、127万8670人となっており、5年連続で過去最多を更新しております。また、外国人労働者を雇用する事業所数は19万4595か所にのぼり、こちらも過去最多を更新中です。企業が外国人労働者を雇用することが徐々に一般的になりつつあるのです。
約127万人というと、青森県の人口と同程度ですから、日本で働く外国人労働者の数は私たちが普段感じているよりも、一層増え続けているのです。この背景には、超高齢社会を迎えた日本の深刻な人材不足や新興国との著しい所得格差があります。つまり、日本で仕事して高収入を得たいという就労目的の外国人と、コンビニや飲食店など深刻な人材不足の職種において低賃金の労働力が欲しい日本との双方のニーズがマッチしている現状があります。
国籍別にみてみますと、中国が全体の約30%を占めており、次いでベトナムの約19%、フィリピンの約12%、ブラジルの約9%、ネパールの約5%と続いております。依然として中国が最多ではありますが、特に、ベトナムとネパールの伸び率が前年比30%以上と顕著なものとなっております。そういえば、大都市のコンビニや飲食店では、ベトナム人やネパール人の店員が目立つように感じられますよね。
しかし、我が国では単純労働を目的とする入国を認めておりません。そのため、就労している外国人労働者が持つVISA(在留資格)は、永住者や日本人の配偶者などの「身分にもとづく在留資格」、外国人留学生の「資格外活動」、技能実習生の「技能実習」、「専門的・技術的分野の在留資格」など、他の在留資格にもとづく就労によるものです。
実際、外国人留学生と技能実習生が約52万人を占めておりますので、日本で働く外国人労働者の約4割が本来の意味での「労働者」とは異なっているのです。この点、政府は2020年までに「留学生30万人計画」を掲げ、外国人留学生の受け入れの拡大を目指しておりますので、留学生の身分を持つ外国人労働者のさらなる増加が予想されます。
日本で外国人労働者を雇用する場合、コミュニケーションという言葉の問題、日本独自の文化や商習慣の違い、働く意識や価値観の違いなど、受け入れる企業側の環境整備や信頼関係の構築なども大切ですが、それ以上に大切なことは労務管理です。
日本で外国人が在留するための在留資格(VISA)は、28種類あり、各在留資格によって可能な就労活動の範囲が定められております。雇い入れる企業側からすると、採用した外国人が行う業務内容がどの在留資格に定める就労活動に該当するのか、その判断をしなければなりません。また、短期滞在者や留学生、家族滞在など、就労が認められていない在留資格の外国人が資格外活動許可を得ずに、もしくは、許可を得たとしても就労制限の範囲を超えて働かせることがあってはなりません。さらには、就労している外国人が、オーバースティ(不法滞在)や密入国者、在留カード不所持などの非正規滞在者の場合も、就労は許されません。
このような就労可能な範囲を誤ったり、在留資格のない不法滞在の外国人を働かせた場合、入管法(出入国管理及び難民認定法)に定める不法就労助長罪により3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科という刑事罰が科されます。しかも、この処罰は不法就労した本人ばかりでなく、不法就労させた雇用主にも科される場合があります。
そのためにも、「在留カード」の確認が必要不可欠です。在留カードとは、日本に滞在する外国人の在留資格を証明する身分証明書のようなものとして、外国人への携帯が義務付けられています。在留カードには、国籍・氏名・性別・生年月日・居住地などの個人情報のほかに、在留資格の種類や期間・顔写真が、カードの裏には資格外活動許可の有無が記載されております。
留学のために滞在する外国人の在留資格では原則的に就労ができません。しかし、留学中の費用などを補うためのアルバイトが認められております。これが「資格外活動」です。管轄の入国管理局へ資格外活動許可証を取得することにより、週28時間以内であれば、就労が可能となります(この28時間に残業時間も含むため、残業を含めて勤務時間をきちんと管理することが大切です)。
外国人労働者を新たに雇用した場合、事業主は、雇い入れ時と離職時の両方についてハローワークへの届け出が必要とされております。届け出る内容は、氏名・国籍・在留資格・在留期間など在留カードに記載された基本的な内容となっており、必ず行う必要があります(雇用対策法第28条)。なお、事業主がこの届け出を怠ったり、虚偽の届け出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
2017年から入国管理局の就労ビザの更新が厳しくなっており、入管法が改正され、偽装滞在者への罰則整備と在留資格の取消強化が図られています。また昨今、外国人労働者への賃金不払いや違法な時間外労働などの法令違反に関する報道も相次いでおります。
弊事務所には、VISA取得に精通した申請取次行政書士が在籍しており、外国人の方の在留資格取得や雇い入れる企業側の国際法務も取り扱っております。また、外国人労働者における在留資格の取得と確認、労働契約の締結、入国管理局へのVISAの申請手続、雇用後の労務管理やコンプライアンス、トラブルへの対応まで専門的に取り扱っております。
入国管理局への申請は在留資格ごとに要件や必要書類が異なりますし、どの在留資格に該当するのか、当該外国人の経歴によっては許可されるか否かの判断が難しい場合もあります。特に、就労ビザの申請は慣れない専門用語が多く、採用後に就労ビザが取得できなかったというケースも散見されます。トラブルを未然に防ぐためにも、まずは弊事務所までご相談ください。
※本文中の統計データは、厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況(平成29年10月末現在)による。