このような言葉を様々なメディアで目にするようになりましたね。どれもサラリーマンにとっては、見逃せないワードです。特に副業については、解禁に踏み切る企業も増えてきており、現に弊事務所でも副業に関するお問い合わせやご相談が増えてきています。
いよいよ他人事ではなくなりつつある副業ですが、その内容は様々です。また、「税金」に関する手続きが必要な場合もあります。今回のコラムでは、サラリーマンが副業をスタートするために知っておきたい副業と税務の基本の“キ”を紹介します。
一口に“副業”といってもいろいろなタイプがあります。ここでは、大きく5つのタイプに分けて考えてみましょう。
本業の終業後や休日に他の会社でアルバイトなどにより安定した収入を得ることができます。その一方で時間的な拘束が大きいといったデメリットもあります。
自分のアイディアで個人事業を開業します。成功すれば大きな収入が得られますが、その反面、リスクも大きいです。将来的には本業化したり、さらには法人化も可能です。
アパート経営などの不動産の貸付けです。スタートにまとまった資金が必要ですが、安定して継続的な収入を得やすい、ミドルリスク・ミドルリターンの副業です。
株式、FX、仮想通貨などの金融商品への投資です。比較的容易にスタートできますが、市場の波により、ハイリスク・ハイリターンなものも少なくありません。
ネットオークション、ネット通販、クラウドソーシングなどのネットツールで収入を得る方法です。個々の収入は大きくありませんが、休憩や通勤中の“スキマ時間”でもトライ可能な、いわゆる「ネット内職」です。
このように各タイプの副業には一長一短の特徴があります。まずは、これらの特徴や本業との時間的な兼ね合いを考慮し、ご自身にマッチする副業を見つけることが、副業デビューの第一歩です。
副業を考えたときに避けては通れないのが「確定申告」をはじめとした税金に関する手続きです。たとえば、「他社兼業タイプ」の副業にトライして給料を得た場合には、金額にかかわらず確定申告が必要となります。また、その他のタイプの副業にトライしたとしても、原則として副業の所得金額(“もうけ”に相当)の合計額が20万円を超える場合には、確定申告が必要となります。
実はこの確定申告がサラリーマンにとって、思わぬハードルになるのです。通常、サラリーマンの給料やボーナスからは、所得税が源泉徴収(天引き)されています。そして、年末になると自ら確定申告をする代わりに会社が「年末調整」を行い、1年間の所得税が確定します。よって、多くのサラリーマンにとって確定申告は少し縁遠いものであり、不安を覚える方も少なくないことでしょう。
また、副業の種類によっては、税務署などに所定の届出書の提出が必要となるケースもあります。これらの税金に関するハードルを一つずつ乗り越えることが、副業により収入を増やすための鍵となるのです。注意すべきポイントを整理していきましょう。
副業はその種類により、開始時に税務署などへ所定の届出書を提出しなければならないものがあります。届出書の有無やその種類は、副業の詳しい実施内容により変化するものの、一般に「自営業タイプ」の副業は、開始時に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。
また、「不動産投資タイプ」の副業も規模の大きい場合(一般的に、10室以上または5棟以上の賃貸経営を行っている場合)は、上記の届出書の提出が必要となります。
なお、両タイプともに、青色申告(後述)を希望する場合には、「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
常に確定申告が必要な「他社兼業タイプ」以外の副業において、確定申告をすべきか否かの判断基準が一般に「20万円の所得金額」であることは、すでに触れました。
しかし、副業の“もうけ”を意味する「所得」の計算には、押さえるべき重要なポイントが2つあります。それは、所得の種類と種類ごとの計算方法です。
所得税法では、所得の種類を10種類に分け、別々の方法により所得金額を計算するルールになっています。そのため、その副業がどの所得の種類に該当するか、どのように計算するかを見極めなければなりません。参考として、代表的な副業ごとの所得の種類、計算方法、確定申告の有無の一例を紹介します。
〇所得の種類:「給与所得」
〇確定申告の有無:収入の金額にかかわらず、確定申告が必要
〇所得金額:アルバイト先の会社から発行される「給与所得の源泉徴収票」に記載される
〇所得の種類:「事業所得」
〇確定申告の有無:所得金額が20万円を超えた場合には、確定申告が必要
〇所得金額:「事業所得の金額 = 収入金額(売上)- 必要経費」
〇所得の種類:「譲渡所得」
〇確定申告の有無
イ.特定口座で源泉徴収あり:原則として確定申告不要
ロ.「イ」以外の場合:株取引の所得金額が20万円を超えた場合には、確定申告が必要
〇所得金額:「株式の譲渡所得の金額 = 譲渡に係る収入金額 - 必要経費」
〇所得の種類:「雑所得」
〇確定申告の有無:所得金額が20万円を超えた場合には、確定申告が必要
〇所得金額:「雑所得の金額 = 収入金額 - 必要経費」
所得の計算でもっとも皆さんを悩ませるのが、「必要経費」の集計です。その基準は、文字通り「収入を得るために必要な経費」であり、収入を得るためにかかった経費を集計します。経費の詳細については、国税庁HP「やさしい必要経費の知識」のページにわかりやすく紹介されています。
しかし、実際には、その副業の詳細な内容の違いにより、所得の種類や計算方法は一概ではなく、判断が難しい点には注意が必要です。
確定申告書の作成・提出方法には大きく分けて、次の3つの方法があります。
このうち、「ネット活用タイプ」の副業のように規模が小さく、比較的単純な内容である場合には、e-TAXを用いた方法がシンプルでわかりやすく、便利な方法です。
一方、「自営業タイプ」の副業のように規模が大きく、複雑な内容である場合には、市販の確定申告ソフトなどを用いて1年間の収入金額と必要経費を取りまとめ、確定申告書を作成するのもよいでしょう。近年はとても使いやすい確定申告ソフトが市販されており、以前に比べて確定申告書の作成が容易になりました。
弊事務所では、「自営業タイプ」や「不動産投資タイプ」の副業のご相談にいらした方には、「青色申告」をお勧めしています。青色申告制度とは、一定の帳簿を備え、しっかりとした経理(複式簿記)を行い、税務署長に青色申告の承認を受け、確定申告において所定の青色申告書を提出することにより、節税につながる税務上の様々な特典が認められる制度です。
この制度の特典を受けるためには、日々の経理や申告書の作成に簿記の知識が必要となりますが、それに見合うだけの節税効果が得られるのです。
「もし確定申告をしなかったら、どんなペナルティーがあるのか?」「もし間違った確定申告書を提出してしまったら、どうなるのか?」副業デビューを考える皆さまが抱く共通したご不安といえます。このようなケースで生じるペナルティーの一例を紹介します。
仮に確定申告をしなかったとしても、税務署などの課税庁は、副業の取引先が持つ資料やマイナンバーなどの紐づけから、その人物が副業により得た収入を把握することができます。そして、確定申告をすべき旨の通知が届けられることになります。なお、確定申告をしなかった場合には、無申告加算税などのペナルティーが課せられることになります。
実際よりも税額の少ない誤った確定申告書を提出した場合には、税務署長から更正通知(税額を増額させる旨の通知)がなされることがあります。この場合には、新たに加算税が上乗せされることがあるほか、所定の延滞税を納めなければなりません。
また、提出した確定申告書に申告漏れなどの著しい誤りがあった場合などには、「税務調査」が行われるケースもあります。
ここまで、副業のバリエーションや確定申告のポイントなどを紹介させていただきました。これらの基本的な情報をスタートラインとして、ご自身にマッチする副業選びやより詳しい税務手続きを知る手掛かりにしていただければ幸いです。
しかし、ご自身にあった副業を見つけることや、自ら確定申告書を作成し提出すること対し、ご不安を覚える方が少なくないのも事実です。このようなご不安を解消し、お客さまの副業ライフをより良いものとするために、弊事務所では、副業選びから確定申告のご相談まで、弁護士と税理士が一緒にトータルサポートしております。副業デビューにあたり、ご不明な点やご不安な点がございましたら、私どもまでお気軽にご相談ください。