SNSや匿名掲示板などで、「個人間融資」「個人融資」といった書き込みやハッシュタグを見かけることがあります。
個人間融資(個人融資)とは、面識のない者同士がお金の貸し借りをすることで、SNSなどを中心にインターネット上で広まっています。
広い意味では、家族や友人などの面識ある人からお金を借りる行為も個人間融資ですが、このコラムで取り上げるのは、面識のない人から融資を受ける(お金を借りる)行為です。
金融機関のような審査もなく、気軽にお金を借りられる利便性もあり、金融機関から借り入れができない状況の人々を中心に利用者が増加傾向にあります。
しかし、個人間融資を原因としたトラブルは増加し、現在、社会問題にまで発展しています。国民生活センターや金融庁なども、個人間融資は様々なトラブルや犯罪に巻き込まれる危険性があるので、利用を避けるよう注意を促しています。
そもそも、個人間融資は違法行為なのでしょうか。また、どのような危険があり、融資をする貸主の狙いは何なのでしょうか。
そこで、今回のコラムでは、SNSなどインターネットを中心に広まる「個人間融資」について解説します。
結論から言うと、ほとんどの個人間融資は違法行為となります。そのため、利用するのは避けた方がよいでしょう。
1-1. 個人間融資が違法である理由
事業として他人に営利目的の融資をする、つまり、貸金業を営むためには都道府県知事などに申請を行い、貸金業登録することが必要です(貸金業法第3条)。
個人でも、他人に繰り返し金銭を貸す行為は貸金業に分類されるため、貸金業登録をしなければなりません。
そのため、貸金業の登録がない個人が反復継続の意思を持ち、金銭の貸付けを行う行為は、貸金業法違反となります。
また、貸し付けた金銭に対する利息も、利息制限法と出資法という2つの法律で上限(貸付け金額に応じて15%~20%)が規制されており、これを超える利息を取ることは両方に違反することになります。
利息制限法の上限金利15%~20%を超過する金利は、超過した部分が無効または行政処分の対象となり(利息制限法第1条、第4条1項、第7条)、出資法の上限金利である20%を超過した金利は刑事罰の対象となります(出資法第5条)。
このような、貸金業登録がない貸付けや違法な利息を付した貸し付けは違法行為となります。そのため、高額な利息に加えて、借りたお金そのもの(元本)にも返済義務はありませんので、たとえ貸主から厳しく請求されたとしても、返済する必要はないのです。
1-2. 個人間融資は借主も法的責任を問われる可能性あり
個人間の金銭の貸し借りは、民法上の金銭消費貸借契約となりますので、借りたお金を返さない場合は、債務不履行責任が発生するのが原則です(民法415条1項)。
また、個人間融資が違法行為であることを逆手に取り、初めから返済の意思なく踏み倒すつもりで融資を受けた場合は、刑法上の詐欺罪にあたる可能性があります(刑法第246条)。
それではなぜ、個人間融資をするケースが後を絶たないのでしょうか。個人間融資をする貸主の狙いと想定被害について考えます。
2-1. 法外な金利を得ることが目的
正規の金融機関であれば、利息制限法や出資法などは順守されていますが、個人間融資の場合、初めからその違法性を承知のうえで、法外な金利による利息を請求してくる場合があります。
何らかの理由により金融機関から借り入れられない借主の弱みに付け込み、高額な利息を詐取するほか、手数料などの名目で様々な金額を請求され、借り入れした金額の一部しか手元に渡らないケースもよくあります。
借用書などの書面上では10万円借り入れした記述があるのに、実際に受け取った金額は5万円しかなかった、などの被害が想定されます。
また、厳しい取り立てによる被害も考えられます。貸金業法では、返済の督促などいわゆる「取り立て行為」に関して、借主の心身に不当な損害を与えないように一定のルールが設けられています。
これらは銀行などの金融機関ではありえない行為ですが、個人間融資の場合は被害に遭う危険性が高いです。
2-2. 性的な嫌がらせやわいせつ行為の強要が目的
女性の借主が返済できない場合、性的な行為やわいせつ行為を要求するほか、アダルト関係の仕事をあっ旋してくるなど、性的搾取を目的にしている場合があります。
望まぬ性交渉を強いられる危険性があるほか、不本意な仕事に就くことを強要される危険性もあります。
2-3. 身分証など個人情報の悪用が目的
個人間融資でも、借主は貸主に対して身分証の提示や住所・氏名・連絡先などの個人情報の提供が条件となることが一般的です。
悪質な貸主であれば、家族や親戚、友人など借主の周囲の人間関係に関する情報を求めてくることもあります。
そのような個人情報は、何らかの犯罪行為に悪用される可能性があるほか、インターネット上に漏洩されるなど悪質な嫌がらせを受ける危険性があります。
また、借主の個人情報が名簿業者などに売り渡されてしまうことも数多くあります。
2-4. 何らかの犯罪行為への加担強要が目的
金銭的な被害のほか、貸主から借主に対して犯罪行為の加担を要求されることがあります。
銀行口座やスマホ・携帯電話の譲渡要求、特殊詐欺の手伝いなど、様々な犯罪行為への加担を要求されます。
このような要求は、返済が滞った際に利息を免除する条件として提示されることがあるほか、中にはそもそも貸付の条件として要求されることも少なくはありません。
2-5. 個人間融資には必ず何らかの狙いがあります
個人間融資の貸主には、貸付以外に何らかの狙いがある場合が多いでしょう。金融機関での借り入れが困難な人にとっては、金融機関のような審査がなく、すぐに借り入れできる個人間融資は便利に感じられるかもしれません。
しかし、実際には様々なトラブルに巻き込まれる危険性が高いため、貸主の本当の狙いへの注意が必要です。
今回の記事では、SNSやインターネットを中心に広まる個人間融資の違法性と危険性について解説しました。
そもそも多くの個人間融資が違法行為であることに加え、貸主はもちろん、借主側も違法行為や犯罪行為への加担を強要される場合も多いため、個人間融資の利用は避けるようにしましょう。
万が一、借り入れをしてしまい、違法な取り立てなどの被害に遭っている場合はすぐに弁護士や警察に相談してください。個人間融資を利用せざるを得なかった生活状況について、債務整理による生活再建ができるかもしれません。ぜひ一度、弁護士にご相談ください。