ビジネスに携わる方にとって「フィンテック(FinTech)」という言葉は馴染み深いものになりつつあるでしょう。フィンテックとはファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)の2つを併せた造語で、革新的な金融商品やサービスを意味します。代表的な例としては、モバイル決済やクラウド家計簿、クラウドファンディングなどが挙げられます。中でもブロックチェーンを基盤とするビットコインに注目されている方も多いのではないでしょうか。この仮想通貨は、円やドルなどの通貨を使用しなくてもお金のやり取りができる新しい貨幣として急速に普及しています。
これらの領域には、金融機関だけでなく多くのベンチャー企業も参入しつつあります。こうした非金融分野の企業は法律・金融規制に直面することになります。金融業界は規制業種であり、技術的に可能であっても規制のもとでは身動きが取れないのです。
2016年5月25日に改正資金決済法、通称「仮想通貨法」が成立し、今年の4月1日から施行されました。同法において仮想通貨は、概ね、「インターネットを通じて不特定多数の間で物品やサービスの購入や売却に使用できる財産的価値」であると定義されています。つまり、ビットコインなどの仮想通貨が、支払手段の一つとして法律で認められたということです。今のところ日本では仮想通貨を支払いに使える店舗は限られますが、仮想通貨が決済手段として公に認められる意味は大きいでしょう。
ところで仮想通貨と言えば、世界一のビットコイン取引量を誇る取引所であったマウントゴックス(東京都渋谷区)が、2014年に65万ビットコイン(当時の時価で数百億円)を消失したなどとして経営破綻したことを思い出す方も多いかと思います(この事件は、後に運営会社社長が横領した疑いが強まり、現在刑事裁判中です)。仮想通貨法は、仮想通貨を取り扱う業者について仮想通貨交換業者として登録を義務化し、取引所について監査法人や公認会計士による監査を義務付けるなどの規制をかけることで、仮想通貨の利用者の保護を図っています。マウントゴックス事件の影響もあってか、日本国内における仮想通貨の取引は低調でしたが、同法の成立により、消費者の不安解消と仮想通貨の信用性増大、取引の活発化につながると期待されています。
2017年6月、富士通は、ブロックチェーンの応用による安心・安全なデータ流通ネットワークを実現するソフトウェアを開発したと発表しました。仮想通貨の技術的基盤であるブロックチェーンは、今後、その高い透明性と堅牢性、非中央集権的特性を生かして、ビジネス用途以外にも医療や食品管理などに応用されていくと予測されています。
今回取り上げたものはほんの一例にすぎませんが、新しい技術が私たちの生活を急速に変化させうる時代に突入しています。テクノロジーの発展が目覚ましい現代であるからこそ、その安心で安全な運営・活用のために、法律が果たす役割はますます大きくなっていくことでしょう。