何らかの犯罪行為をしてしまった場合、未成年であっても逮捕される可能性があります。もし、自分の子どもが逮捕されてしまったら、親としてはとても不安に思うのではないでしょうか。
このコラムでは、未成年の子どもが少年事件で逮捕された場合、どのように手続きが進むのか、そして、親は子どものために何ができるのか、刑事弁護や少年事件に詳しい弁護士が解説します。
なお、民法改正により2022年4月より成人年齢が18歳に引き下げられました。一方、少年法も改正され、犯罪行為をした18歳と19歳を新たに「特定少年」と位置づけたうえで、引き続き少年法の対象としています。
そのため、このコラムでは18歳や19歳も含めて少年や未成年として解説しています。また、少年法では性別を問わず少年としているため、このコラムでも男女ともに少年としています。
20歳未満の少年が起こした事件を「少年事件」と呼びます。少年事件では、少年法にもとづき、20歳以上が起こした事件とは異なる手続きの流れで少年の処分が決められます。
そして、事件を起こした少年が逮捕されるかどうかは、少年が14歳以上か未満かによって異なります。
14歳以上の少年が犯罪行為をした場合、「犯罪少年」(18歳と19歳は「特定少年」)として扱われ、逮捕される可能性があります。逮捕されると20歳以上の場合と同様に、警察や検察による取り調べが行われるほか、最長20日間の勾留を受ける可能性があります。
法律により、14歳に満たない者の行為は罰しないと定められています(刑法第41条)。そのため、14歳未満の加害者は「触法少年」として扱われ、逮捕されることはありませんし、勾留を受けることもありません。
ただし、14歳未満でも、被害者が死亡するなど重大な事件であれば、一時保護という措置により、児童相談所に身柄を拘束される可能性があります。また、少年審判が開かれて何らかの保護処分を受けるケースもあります。
14歳以上の少年が何らかの事件を起こして逮捕されると、主に次のような流れで手続きが進められます。
なお、20歳以上が逮捕された場合、事件の内容や被害の程度を踏まえて微罪処分や不起訴処分にするなど、警察や検察官が処分を決めることもできます。
一方、少年事件では、犯罪行為をした疑い(嫌疑)がないケースなどを除き、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送致されます。これは、少年を保護する観点から家庭裁判所が処分を決めるべきという考えによるもので、「全件送致主義」と呼ばれます。
14歳以上の未成年が逮捕された場合、まず警察署に設置された留置場などに身柄が拘束され、警察の取り調べを受けることになります。警察の取り調べは最長で48時間です。
警察の取り調べが終わると、検察官に事件が引き継がれる(送致)ことになります。なお、罰金以下の刑にあたる犯罪行為の場合は、警察から直接、家庭裁判所に送致されます。
ただし、特定少年が逮捕された場合は、罰金以下の刑にあたる犯罪行為でも検察官に送致されます。
警察から検察官に送致されると、引き続き検察官による取り調べが行われます。検察官の取り調べは最長24時間です。
検察官は24時間の取り調べを通じ、家庭裁判所に送致するか、または、引き続き取り調べを行うため、裁判所に勾留を請求するかを決定します。もし、裁判所が勾留を認めると、原則として10日間、延長により最長で20日間、身柄が拘束されて取り調べを受けることになります。
つまり、警察の段階から含めると、最大で23日間の身柄拘束と取り調べを受けることになります。
ただし、少年事件で勾留が認められるのは、やむを得ないケースに限られます(少年法第43条3項)。勾留はあくまでも例外的な措置なので、代わりの対応として「勾留に代わる観護措置」が認められる場合があるのです。
勾留に代わる観護措置が認められると10日間にわたって少年鑑別所に収容されます。なお、勾留に代わる観護措置は、勾留のように延長されることはありません。
家庭裁判所に事件が送致されると、処分を決定する少年審判を開始するか裁判官が判断するため、家庭裁判所調査官による調査が行われます。
調査官は、少年の性格や日頃の行動、生育歴、環境などを、次のような方法で調査します。
ほかにも、反省を促して再非行を防止するための面接指導をしたり、地域美化活動に参加させたりするケースもあります。
また、より専門的な調査を行うため、家庭裁判所への送致から24時間以内に、少年鑑別所での「観護措置」が決定される場合があります。少年鑑別所では、医学や心理学などの知識、経験にもとづく検査や面接などが行われます。
観護措置の期間は、原則として2週間です。必要に応じて4週間まで延長されますが、重大事件を起こして観護措置を受けているなどの事情があれば、最大で8週間まで延長される可能性もあります。
これらの調査の結果、少年審判を開く必要がないと家庭裁判所が判断すれば、事件は終了となります(審判不開始)。たとえば、軽微な事件で、調査を通じて少年が反省しており、再非行のおそれがないと認められたようなケースです。
少年審判とは、少年に対する処分を決定するための手続きで、家庭裁判所で開かれます。審判には少年や裁判官のほか、裁判所の書記官や調査官、事務官、保護者、弁護士などの付添人らが出席します。
刑事裁判のような手続きですが、非公開で行われる点や、基本的に検察官が立ち会わない点などが異なります。
少年審判で処分の内容をすぐに決めるのが難しいようなケースでは、調査官が少年の生活態度をチェックする「試験観察」が行われる場合があります。試験観察の期間に決まりはありませんが、3~6か月ほどになることが多いようです。
試験観察の方法には、次の2種類があります。
試験観察を通じ、調査官は少年に対して更生に向けた助言や指導をしながら少年を観察します。試験観察の結果も、裁判官が処分を決定する際の重要な判断材料となります。
少年審判によって裁判官が下す処分には、主に次の4種類があります。
少年を更生させるための処分で、大きく次の3種類に分類されます。
3種類のうち、どの処分が下されるかは、犯罪行為の内容、これまでの調査や観察の結果などを踏まえて決められます。
また、保護処分はあくまでも少年の更生が目的であり、刑罰ではありません。そのため、どの処分が下されたとしても、前科が付くことはありません。
知事または児童相談所長に事件を送致し、少年への対応を児童福祉施設の措置にゆだねる処分です。
18歳未満の少年を対象に、非行性は高くはないものの、家庭環境などに問題があり、継続的な指導が必要と判断される場合に下される可能性があります。なお、こちらも前科は付きません。
少年の非行歴や心身の成熟度、事件の内容などを踏まえ、保護処分などではなく刑事裁判による処罰が相当と判断された場合の処分です。家庭裁判所に送致された少年事件が検察官に戻されるため、「逆送」とも呼ばれます。
なお、犯行時16歳以上で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件では、原則として逆送となります(原則検察官送致対象事件)。さらに、特定少年の場合は、死刑、無期または短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮にあたる罪の事件も逆送の対象に含まれます。
調査や審判などを通じた教育的な働きかけにより、少年に再非行のおそれがないと認められる場合、処分を下す必要がないと判断されます(不処分)。不処分が認められれば、保護観察や各施設への入所といった処分を受けず、通常の生活に戻ることができます。
突然、警察から連絡を受け、子どもが事件を起こして逮捕されたことを知ったら、親であれば混乱してしまうでしょう。それでもまずは落ち着いて、次のような行動をすることが大切です。
まずは、事件の事実関係を警察に確認することから始めます。たとえば、犯罪行為の内容や、事件がいつどこで発生したのか、被害者の有無など、事件の詳細を可能な限り警察に尋ねましょう。
警察から確認した事件の詳細を弁護士に説明し、弁護活動を依頼しましょう。弁護士は少年の付添人として、早期の身柄解放や処分の回避、軽減に向け、さまざまなサポートをしてくれます。
特に、逮捕直後に依頼すれば、警察による取調べの段階からサポートを受けられ、その後の手続きを有利に進められることが期待できます。子どもの逮捕を知ったら、できるだけ早く弁護士へ連絡することをおすすめします。
警察の取り調べ(最長48時間)と検察官の取り調べ(最長24時間)が終わると、留置所や少年鑑別所などにいる子どもと面会できるようになります。逮捕された子どもは不安を感じていたり、パニックになっていたりするかもしれませんが、親の顔を見ることで気持ちが落ち着くでしょう。
また、生活必需品や現金などを差し入れることができるため、足りないものや欲しいものを聞いて渡してあげると喜ばれるかもしれません。
家庭裁判所への送致後に実施される家庭裁判所調査官の調査では、親も調査官と面談する場合があります。
調査官との面談結果は、処分の内容を決めるうえで重要なポイントのひとつです。そのため、調査官との面談の実施に関する連絡を受けたら、真摯に対応するようにしましょう。
また、少年審判では、裁判官や付添人である弁護士から質問を受けます。親として考える事件の背景や、子どもの現在の様子、今後の接し方などを尋ねられるので、丁寧に回答しましょう。
調査や審判への対応が、最終的な処分の内容を大きく左右することも考えられます。対応方法について、弁護士とも相談しながら検討することが重要です。
親が逮捕された子どものためにできる支援の中で、特に重要なもののひとつが、弁護士への相談と弁護活動の依頼です。弁護士に依頼することで、次のようなサポートを通じて再非行を防止し、早期の身柄解放、処分の回避や軽減などが期待できます。
警察と検察官による取り調べが終わるまでの最長3日間(48時間+24時間)は、弁護士しか面会することができません。そして、この期間中の取調べにどう対応するかによって、今後の手続きが有利にも不利にもなってしまうのです。
子どもが逮捕されたことを知った直後に依頼すれば、弁護士がすぐ子どもと面会し、取り調べの対応方法などをアドバイスしてくれます。
勾留や観護措置など、長期にわたって身柄が拘束される措置が決まると、子どもにとって大きな負担になります。学校に通っていたり、働いていたりすれば、退学や解雇の処分を受けるかもしれません。
弁護士であれば、検察官や裁判所に意見書や身元引受書を提出するなど、長期の身柄拘束を回避するため、さまざまな活動をしてくれます。また、学校や職場に事件のことを伝えないよう要請することも可能です。
被害者がいる事件では、被害者との示談交渉を迅速に進めます。示談が成立すれば早期の身柄解放が認められる可能性も高まります。
もし、勾留や観護措置が避けられず、退学や解雇を受けるおそれがある場合は、学校や職場への働きかけを行います。通学や勤務を続けることが再非行の防止に繋がると学校や職場に説得するなど、退学や解雇を回避するための活動をしてくれるでしょう。
被害者との示談成立は、早期の身柄解放だけでなく、処分の回避や軽減が期待できます。
ただし、親が被害者に接触して交渉を求めても、応じてもらえないケースが大半です。そもそも、連絡先を把握できないことも考えられます。
弁護士であれば、警察などを通じて連絡先をスムーズに把握できますし、弁護士が交渉を求めれば、応じてもらえる可能性も高まるでしょう。そして、弁護士なら妥当な慰謝料の相場を理解しているため、被害者から不当に高額な請求を受けても応じることなく、早期の成立を目指せます。
また、調査官による調査などの手続きに進めば、子どもの今後の生活や、親による監督の方法などを一緒に検討し、その結果を調査官に報告します。審判が始まれば付添人として出席し、反省の姿勢や更生に向けた努力を裁判官に伝えることを念頭に、子どもや親に質問してくれます。
このように、処分を受けることを回避したり、少しでも軽減したりするために、さまざまな方法で子どもと親を支えてくれるでしょう。
子どもが逮捕されたら弁護士にすぐ相談、依頼することが重要ですが、弁護士なら誰でもよいわけではありません。
少年事件は、成人による一般的な刑事事件とは手続きの流れが異なるため、より専門的な知識が求められます。また、親の対応も処分の内容に大きく影響するので、子どもだけでなく親もサポートできるスキルが必要です。
そのため、刑事弁護はもちろん、少年事件にも精通した弁護士に依頼することが重要です。弁護士法人プロテクトスタンスには、刑事弁護と少年事件の経験が豊富で、警察や検察官、家庭裁判所の手続きに熟知した弁護士が在籍しています。
ご依頼後はすぐに面会へ向かい、解決まで全力でサポートいたします。どうぞ安心してお任せください。