スマートフォンやパソコンなどからアクセスし、オンライン上で金銭を賭けてゲームを行う「オンラインカジノ」。最近、オンラインカジノを利用したとして、有名な芸能人やスポーツ選手などが検挙されたというニュースを目にしたことがある方も多いでしょう。
オンラインカジノはインターネット上やSNSなどで広告が流れることもあるため、利用しても問題がないように思えるかもしれません。しかし、オンライン上でもお金を賭ける行為は「賭博罪」に該当します。
もし、「スマホからちょっと遊ぶだけならバレないだろう」などと考えているのであれば危険です。オンラインカジノの取り締まりは厳しくなっており、短期間や少額の利用でも警察などに発覚する可能性は十分にあります。
このコラムでは、オンラインカジノの違法性や、警察にバレる理由、利用してしまった場合にとるべき対応などを、刑事弁護に詳しい弁護士が解説。また、オンラインカジノの規制強化に向け、2025年9月に施行される「改正ギャンブル等依存症対策基本法」のポイントについても説明します。
オンラインカジノに興味がある方や、すでに利用した経験がある方はぜひ最後までお読みください。
オンラインカジノはスマートフォンやパソコンがあれば簡単にアクセスできるため、実際に利用した経験がある人は少なくありません。
警察庁の調査によると、2024年7月から2025年1月の期間中に、国内でオンラインカジノを利用している人の推計値は約197万人。過去に利用したことがある人は推計約337万人で、多くの利用者がいる実態が浮き彫りとなりました。
また、年間の賭け金総額は1兆2,422億円にのぼると推計されており、オンラインカジノは大規模な市場を形成しています。
国内でオンラインカジノが蔓延する中、ギャンブルにのめり込んでしまうケースも多いようです。
警察庁の調査で、オンラインカジノの経験者500人に対し、自身がギャンブル依存症だと思うか尋ねたところ、「そう思う」と「少しそう思う」との回答が約6割を占めました。
出典:「令和6年度 オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」(警察庁)のデータを引用して作成
また、オンラインカジノがきっかけで、消費者金融や家族・友人・知人から借金をしたことがある人の割合は46.2%。中でも10代は61.1%、20代と30代も半数以上が借金をしたことがあると回答するなど、若い世代を中心に借金をしている状況でした。
出典:「令和6年度 オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」(警察庁)のデータを引用して作成
オンラインカジノを気軽に利用し、のめり込んでしまう人が少なくない背景のひとつに、「オンラインカジノ=違法ではない」という認識があると考えられます。
警察庁の調査によると、オンラインカジノの経験者のうち、違法性を認識していたのは60.2%。約4割が違法だと認識せずにオンラインカジノを利用していました。
インターネットやSNSなどでオンラインカジノの広告を見て、ゲーム感覚で利用を始めた人もいるかもしれません。そして、利用者が検挙されたニュースをきっかけに、初めて違法であることを知った人もいるのではないでしょうか。
オンラインカジノが違法である理由や、どのような罪が成立するかご説明します。
競馬や競輪、競艇、宝くじなど、国から許可された「公営ギャンブル」以外のギャンブルをすると「賭博罪」(刑法第185条)に該当することは、よく知られているでしょう。
一方、賭博罪が成立するのは国内で賭博をした場合なので、たとえば海外旅行先にあるカジノでギャンブルをしても賭博罪は成立しません。そのため、海外の企業が運営・管理するオンラインカジノは「グレーゾーン」であり、利用しても賭博罪にはならないと誤解する人もいるようです。
しかし、運営拠点が海外にあっても、日本国内からオンラインカジノのサイトにアクセスして賭博行為をすると、日本の刑法が適用されて賭博罪が成立します。たとえ、オンラインカジノが合法の国で運営されているサイトを利用しても同様です。
もちろん、オンラインカジノのサイトにアクセスしても、お金を賭けずに無料で遊んだだけなら賭博罪にはあたりません。しかし、お金を賭けてしまった場合、合法の国で運営されているオンラインカジノでも、日本からアクセスしていれば賭博罪となることは理解しておきましょう。
賭博罪の刑罰は50万円以下の罰金または科料です。常習的に賭博を行なっていると認められた場合は、「常習賭博罪」として3年以下の拘禁刑が科される可能性があります(同法第186条1項)。
また、オンラインカジノの主催者も刑罰の対象となります。自分の利益を図るために賭博場を開設する行為は「賭博開帳図利罪」に該当し、刑罰は3か月以上5年以下の拘禁刑です。
オンラインカジノに関するニュースを見て、「なぜ利用したことがバレるのだろう」と疑問に感じる人もいるでしょう。顔を見せることなく、匿名で利用していれば、警察などに発覚することはないと考えるかもしれません。
しかし、オンラインカジノに対する警察などの捜査手法は高度化しています。「少しくらいなら平気」「自分は大丈夫」と考えていても、検挙されるリスクは十分にあると認識し、絶対に利用しないことが重要です。
オンラインカジノの利用はどのようなきっかけで、警察などの捜査機関に発覚するのでしょうか。一例として、次のような経路が考えられます。
オンラインカジノの利用はさまざまなルートから発覚する可能性があります。実際に検挙される人も増えているため、「利用してもどうせバレないだろう」と、警察の捜査を甘く見ないほうがよいでしょう。
警察庁の発表によると、2024年にオンラインカジノなどオンライン上での賭博事犯で検挙されたのは279人。2022年の59人から約4.7倍に急増しています。
出典:「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」(警察庁HP)のデータを引用して作成
そして、2025年9月に施行される「改正ギャンブル等依存症対策基本法」に、オンラインカジノの規制強化が盛り込まれた点も注目です。
規制強化は、オンラインカジノ対策を徹底するという国の方針であり、利用に対する取り締まりも今後さらに厳しくなるかもしれません。短期間や少額の利用でも、検挙されるリスクが高いと考えたほうがよいでしょう。
オンラインカジノの利用者が後を絶たない背景のひとつに、インターネットやSNS上でオンラインカジノの広告や宣伝が行われている点が挙げられます。広告を何度も目にしているうちに、違法であるという認識がなくゲーム感覚で違法なギャンブルに手を染めてしまう人もいるでしょう。
オンラインカジノに関する広告や宣伝の規制強化などを進めるため、政府は「ギャンブル等依存症対策基本法」を改正。2025年9月25日から施行されます。
改正法のポイントとして、オンラインカジノの開設や運営、オンラインカジノに誘導する情報発信など、さまざまな行為が禁止となります。禁止される主な行為は次の通りです。
禁止の対象となる宣伝や広告の一例として、オンラインカジノへの登録を促すことはもちろん、「日本語対応しています」などとうたう勧誘行為も含まれます。また、オンラインカジノサイトへのリンクを貼り付けた投稿も禁止です。
一方、禁止行為に対する罰則規定が設けられなかったため、実効性を疑問視する声もあるようです。この点、宣伝や広告の禁止が明文化されたことにより、オンラインカジノを宣伝するSNS投稿や広告の削除要請、サイトへのアクセス遮断(ブロック)などの迅速な実施が期待できるでしょう。
このほか、家庭や学校、職場、地域などでの教育や広報活動を通じ、オンラインカジノの禁止について周知徹底を図るための措置を講ずることが、国や地方公共団体の義務として明記されました。
オンラインカジノを利用した経験がある人は、「警察に逮捕されるかもしれない」「刑罰を受けるのではないか」といった不安があるのではないでしょうか。
過去にオンラインカジノを利用したことがあっても、必ず検挙されるわけではありません。しかし、警察による検挙者数が増加しており、法改正により規制強化も進む現状を踏まえると、事前に心構えや準備をしておくことが極めて重要です。
特に注意すべきポイントと、とるべき対応策を解説します。
オンラインカジノの利用が発覚しそうになった場合、「履歴を消せば大丈夫」「警察には利用していないと話せばいい」などと考えるかもしれませんが、これは非常に危険です。
上述のとおり、警察は銀行や決済サービスの入出金履歴、インターネットの通信記録などを押収・解析できるため、利用を隠すことはほぼ不可能と考えられます。むしろ、虚偽の説明や証拠隠滅の行為は、逮捕されて身柄を長期に拘束されたり、起訴されて刑罰が重くなったりする要因になり得るでしょう。
過去の利用が警察に発覚した際は、無理に隠そうとせず、正直に説明できる準備を整えておくことが大切です。
また、警察に発覚して捜査を受ける前に、自首することを検討してもよいかもしれません。自首には、逮捕の回避や不起訴処分の獲得、刑罰の減軽などのメリットが期待できます。
オンラインカジノにのめり込む原因のひとつとして、ギャンブル依存症も挙げられます。ギャンブル依存症からの回復を目指し、専門的な治療を行う医療機関の受診や、自助グループへの参加を検討してもよいでしょう。
また、負けを取り戻すためにお金を借り、多重債務に陥っているにもかかわらず、いつか大金を得られると考えてオンラインカジノから抜け出せなくなるケースもあります。
借金問題の解決が、ギャンブルとの関係を断つきっかけとなるかもしれません。現在の収入では借金の返済が難しい場合、借金の総額や毎月の返済額を減らせる債務整理をおすすめします。
オンラインカジノに関する広告を目にしていると、「グレーゾーン」だと勘違いするかもしれませんが、オンライン上のギャンブルは「賭博罪」に該当する犯罪行為です。
検挙者数が増加しており、「ギャンブル等依存症対策基本法」の改正による規制強化も進むため、今後は取り締まりがさらに厳しくなるかもしれません。
刑罰を受けるリスクはもちろん、検挙時に実名報道されれば社会的なダメージは免れないため、「利用してもバレはしないだろう」などという考えは持たず、絶対に利用してはいけません。
過去に利用したことがある、または現在も利用している方は、ぜひ弁護士へご相談ください。
刑事弁護に詳しい弁護士であれば、自首の手続きを支援したり、警察の取り調べを受ける際の対応をアドバイスしたりするなど、さまざまなサポートが可能です。もし、起訴された場合も、刑罰の減軽を目指してくれます。
借金を抱えて返済が難しい状況に陥っている場合は、債務整理を依頼してもよいでしょう。
債務整理には自己破産や任意整理、個人再生など複数の方法があります。そして、借金が高額であれば、返済義務が免除される自己破産が有効な手段となり得ます。
しかし、ギャンブルを原因とした借金は原則として自己破産が認められない点に注意が必要です。任意整理や個人再生などの手続きも含め、どのような手段を講じるべきか弁護士が検討してくれるでしょう。
弁護士法人プロテクトスタンスは、さまざまな事件の刑事弁護を担当した弁護士が在籍しております。
オンラインカジノを利用してしまい、警察に発覚することを不安に感じている方や、すでに取り調べを受けている方はぜひご相談ください。不起訴処分や刑罰の減軽などを目指し、経験豊富な弁護士が全力でサポートいたします。
もちろん、高額な借金で苦しんでいる方も、私たちにお任せいただけます。自己破産だけでなく、任意整理や個人再生にも精通しておりますので、借金の総額や収入の状況などを踏まえ、借金問題の解決に向けた最善の手段をご提案することが可能です。