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来月はゴールデンウィーク、その後には夏休みが待っています。旅行の予定のある方や計画中の方も多いのではないでしょうか。今回は、てるみくらぶのニュースを参考に、出発前に旅行会社が破産したら代金を取り戻せるか、をテーマにお話ししたいと思います。
2017年3月27日、格安の航空券やツアーを取り扱う旅行会社「てるみくらぶ」が東京地方裁判所に破産を申立て、破産手続開始決定を受けました。
破産は債務者の財産を処分することにより金銭化し、その金銭を債権者に配当する手続です。破産した会社に財産がなければ債権者への配当もありません。てるみくらぶのケースでは、負債総額は151億円と言われる一方、直前に現金一括入金のツアーを企画していたと伝えられているなど、資金繰りに窮していた様子からは、会社自体に十分な財産があるとは考えにくく、配当を受けることは難しそうです。
それでは、破産手続の配当以外に、代金を取り戻す方法はないのでしょうか? 以下の3つの方法が考えられます。
旅行会社が旅行業協会の正会員であれば(保証社員)、旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で弁済を受けることができます。旅行業協会には「一般社団法人日本旅行業協会(JATA)」と、「一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)」の2つがあります。
JATAには、弁済業務保証制度(法定制度)の他に、ボンド保証制度(任意加入制度)もあり、旅行会社が「ボンド保証会員」であった場合はより厚い保護を受けることができます。
いずれの保証社員でもない旅行会社の破産で損害を受けた場合は、その旅行会社を登録した行政庁に対して、営業保証金制度から弁済を受けるための手続きをとることができます。
てるみくらぶはJATAの保証会員ではありますが、ボンド保証制度には加入しておらず、JATAによると、弁済限度額は1億2000万円とのことです。支払い済み旅行代金は99億円と言われていますので、全員がこの手続をとると仮定した場合、代金の1%程度しか弁済されない計算になります。
割賦販売法上、購入した商品(権利)や役務などに問題があるときは、信販・クレジット会社等のからの代金請求に対し、その支払いを停止することができます(支払停止の抗弁)。
したがって、クレジットカードで旅行代金を支払っている場合はクレジット会社へ支払停止の申し出をすることにより損害を防ぐことができる可能性があります。ただし、支払回数が3回未満のときや現金販売価格に分割払い手数料を加えた金額が4万円未満のときなど、支払の停止ができない場合も多いですので注意が必要です。
なお、このような法律上の制度以外にも、クレジットカード会社が独自に整備しているサービスがあったり、特別な対応をしてくれる会社もあるようです。旅行代金をクレジットカードで支払っていた場合、ひとまずカード会社に問い合わせてみるのもよいでしょう。
最後の手段として、会社役員の法的責任を追及して民事訴訟を提起し、会社役員に対して損害賠償請求をすることも考えられます。てるみくらぶのケースでも、粉飾決算や破産直前の現金一括支払キャンペーン等、役員の責任を問い得る事情もありそうです。しかし、時間、労力、費用をかけて訴訟に勝ったとしても役員に支払能力がない場合は現金回収という目的は達成されません。
以上のように、出発前に旅行会社が破産してしまった場合、代金の全額を取り戻すのは簡単とは言えませんが、取り得る手段がないわけではありません。旅行代金に限らず、日常生活の中で思わぬトラブルに巻き込まれてしまったときは、弊事務所へお気軽にお問合せください。