2022年4月から、成年年齢が現在の20歳から18歳に引き下げられます。
日本で成年年齢が見直されるのは、1876年に成年年齢が20歳と定められて以来、約140年ぶりのことです。
成年年齢を引き下げることになった背景のひとつが、2015年の公職選挙法改正です。若い人にも政治に関与してもらうため、投票年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
こうした中で、より日常生活と密接にかかわる民法も改正し、成年を18歳からにするべきではないかという議論も行われるようになったのです。
また、これまで日本の常識だった「成年=20歳」は、世界を見渡すと実は少数派です。
法務省によるとアメリカやイギリス、カナダ、ドイツ、メキシコなど、多くの国が成年年齢を18歳としています。
こうした流れを受けて2018年に民法が改正され、成年年齢が引き下げられることになりました。
そこで今回のコラムは、成年年齢の引き下げにより変わることなどを解説します。
4月からは18歳の方も「大人」として扱われるようになり、様々なことが1人でできるようになりますが、その分、責任も大きくなります。
成年になるとどのようなことができるようになるのか、そして、どのような注意が必要なのかを理解するためにも、ぜひ最後までお読みください。
そもそも未成年と成年には、大きく次のような違いがあります。
つまり成年になることで、「親の同意がなくても様々な契約を1人で結ぶことができる」ようになるのです。
それでは、成年年齢の引き下げにより、18歳になるとできるようになることを説明します。
1-1. 親の同意がなくても契約を結ぶことができる
未成年者は、お小遣いの範囲の買い物などは可能ですが、基本的に親の同意がなければ1人で契約ができません(婚姻経験がある場合を除く)。
今までは、20歳にならなければ親の同意がないと契約できませんでしたが、4月からは18歳になれば1人で契約できるようになります。
一例として、次のような契約を1人でできます。
もうすぐ18歳になる人は、親の同意がなくてもこれらの契約ができるようになるので、うれしく思うかもしれません。
ただし、契約に対して自分自身が責任を負わなければならない点にも注意が必要です。
現在は18歳や19歳の人が親の同意を得ないで契約した場合、「未成年者取消権」により契約を取り消すことができますが、4月以降は取り消しができなくなります。
成年になったばかりで社会経験が乏しい人をだまし、不利な契約させようとする悪質な業者もいるので、高額な契約をするような時は信頼できる人に相談するようにしましょう。
1-2. 親の同意がなくても結婚ができる
現在、男性は18歳以上、女性は16歳以上であれば結婚することができますが、20歳未満の未成年が結婚する場合は親の同意が必要です。
4月以降は18歳になれば親の同意がなくても結婚が可能になります。
また、成年年齢が18歳になることに伴い、女性が結婚できる年齢も18歳以上になります。
つまり、4月からは結婚に親の同意は不要になるのです。
1-3. 10年のパスポートを取得することができる
旅券法という法律により、これまで有効期間が10年のパスポートは20歳にならなければ取得できませんでした。
成年年齢の引き下げに伴い、4月からは18歳になれば有効期間が10年間のパスポートを取得できるようになります。
1-4. 性別の取扱いの変更の審判を受けられる
性同一性障害の人は、一定の条件を満たすことで、戸籍上の性別変更を求める審判を家庭裁判所に申し立てることができます。
今までは20歳以上でなければ申し立てができませんでしたが、4月からは18歳になれば申立てが可能になります。
1-5. 医師免許や公認会計士の資格などを取得できる
医師法や薬剤師法では「未成年者には、免許を与えない」と定められています。
また、10代が公認会計士や行政書士の試験に合格したと話題になることもありますが、実際に有資格者として業務ができるのは、成年になってからです。
4月からは、成年年齢が引き下げられるので、18歳になったらこれらの資格を取得したり、業務を行なったりできるようになるのです。
4月からは、18歳もお酒を飲んだり、タバコを吸ったりできるようになると考える人もいるかもしれません。
飲酒・喫煙については、健康面への影響といった観点から、4月以降も20歳以上のままです。
また、競馬や競輪、競艇といった公営ギャンブルができるのも、従来通り20歳になってからです。
このほか、国民年金の被保険者となる年齢や、養子を迎えることができる年齢も20歳以上のままです。
子どもがいる夫婦が離婚する際、養育費について「子どもが20歳になるまで養育費を支払う」など、支払う期間を具体的に決めていた場合、その期間中は養育費を支払うことになります。
それでは、「子どもが成年に達するまで支払う」と約束していた場合、成年年齢の引き下げは、支払い期間に影響するのでしょうか?
約束したのが4月以降であれば、成年年齢が18歳になっているので、養育費の支払いも18歳までです。
一方で、約束した時点の成年年齢が20歳だった場合は、4月になって成年年齢が引き下げられたとしても、養育費の支払いは子どもが20歳になるまで続くと考えられます。
4月以降も「成年=20歳」と認識したままの人は少なくないと考えられます。
養育費の支払い期間がトラブルの原因となることを避けるためにも、養育費について話し合う際は、「20歳に達するまで」など、具体的な期間を決めることをおすすめします。
4月からは18歳から成年になるので、高額な売買やローン、結婚などの様々な契約を、親の同意がなくてもできるようになります。
一方で、こうした契約は消費者被害や借金、離婚問題など、様々なトラブルにつながる可能性があると認識することが重要です。
特に18歳であればまだ高校生という人も多く、社会経験に乏しいことから、よりトラブルに巻き込まれやすいとも考えられます。
そのため、成年になったとしても契約を結ぶ際は慎重に考え、信頼できる人に相談するようにしましょう。
もし実際にトラブルが発生してしまった場合は弁護士に相談することを検討してもよいでしょう。
法律の専門家である弁護士が、トラブルの解決に向けた最善策を提案してくれます。
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