秋も深まり、いよいよ紅葉シーズンも本番となりました。紅や黄色に色づいた秋の木々は、日本の美しい四季をあらわす象徴ともいえます。意外に思われるかもしれませんが、この美しい紅葉も、日常生活のなかではトラブルになることがあります。今回は、秋に確認しておきたい紅葉にまつわるトラブルの話です。
紅葉といっても、木の葉は美しく色づくだけではありません。そのあと多くの葉は地面に落ちて、落ち葉となります。この落ち葉も、山林であれば腐葉土として地中の栄養になりますが、住宅地ともなりますと、トラブルの種になることがあります。
たとえば、隣家の敷地に大きな木があったとします。
落ち葉が自宅の敷地内に大量に落ちてきて、掃いても掃いてもきりがない場合、どうしたらよいのでしょうか。
この方法はもってのほかです。近隣トラブルによくある「おとなりから伸びてきた枝を勝手に切ってもよいのか」という問題と同じく、隣家の敷地に植えられている木の所有権は相手にあり、たとえ自分の敷地に枝葉が伸びてきたとしても、それを勝手に切る権利はありません。ただし、自分の敷地に枝が伸びてきている場合は、おとなりさんに枝を切るよう求めることはできます(民法233条1項)。
では、落ち葉が今後落ちてこないように、おとなりさんに木自体を伐採するようにお願いすることはできるのか。これについては、落ち葉に困っているという理由のみでは、木の伐採を隣家に強制することまではできず、あくまで事実上お願いすることができるにとどまると考えたほうがよいでしょう。
自分の敷地に落ちてきた落ち葉については、原則からいえば元の木の所有者である隣家に帰属するものでありますが、落ち葉の収取(取って利用すること)については権利を放棄していることがほとんどであり、また、他の敷地から落ちてきた落ち葉であっても、ある程度は各敷地の所有者が清掃するものという慣習があると考えられます。
そのため、ある程度の落ち葉については、自分で清掃しなければなりません。ただし、落ち葉の量が極めて多く、雨どいに詰まるなどの被害がある場合などは、隣家に対して枝葉の切除などの対策を求めることはできると考えられますし(所有権にもとづく妨害排除・予防請求権)、結果として雨どいが損壊したり、それにより水が屋内に入ったなどという場合は、損害賠償請求できる可能性があります(同717条2項)。
ところで、上の例で植えられている木が栗の木であった場合、「栗」が自分の敷地に落ちてきたら、これを勝手に拾って食べてもいいのでしょうか。たしかに、上記の例では、自分の敷地に落ちた落ち葉は掃いて掃除しても問題ないことからすれば、同じように、勝手に拾って食べても問題ないように思われます。
しかし、栗は、一般的な落ち葉と違い、果実(民法上の天然果実)です。この果実は、たとえ自分の敷地に落ちてきたとしても、原則として、落ちてくる前に栗がなっていた栗の木の所有者、つまり、隣家に帰属します(同89条1項)。
したがって、原則として、栗を勝手に拾って食べることはできないということになります。ただし、おとなりさんが栗の回収に来るなど、その栗を収取するという意思がない場合には、問題になることは少ないかもしれません。もちろん、トラブルを防ぐためには、あらかじめ隣家の了承を得ておくと安心です。
また、日本では有名無名を問わず、いちょう並木が数多くあります。紅葉シーズンの銀杏の特徴といえば、美しい黄色の葉のほかに「ぎんなん」の実があります。茶碗蒸しの具材やお酒のおつまみとしても利用されていますね。
秋になると、銀杏並木でぎんなんを拾っている方を多く見かけます。このぎんなんについても栗の場合と同じように、銀杏並木の所有者がぎんなんを収取する意思があるのかどうかによって変わってくるものと考えられます(ぎんなん拾いが有名ないちょう並木もあるなど、トラブルに発展することは少ないようですが、不安な場合は所有者に確認するとよいでしょう)。
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