皆さま、こんにちは。
平成29年8月2日、近畿大学は、ボクシング部の監督が、女子部員に対してセクハラ行為をしたとして、同日付でこの監督を諭旨解雇の処分としました。近畿大学によると、同監督には、このほかにも複数の男子部員に対して、度を越した強いパンチを打つなどのパワハラ行為も認められたとのことです。
本件のようなスポーツ指導者によるセクハラ行為、パワハラ行為または暴力行為は残念ながら後を絶ちません。スポーツの指導者と選手とは非対等な関係にあることが一般的であり、このことが指導者によるパワハラ行為や暴力行為等が発生しやすい要因であるともいわれています。では、もし指導者によるセクハラ行為、パワハラ行為または暴力行為を受けた場合、選手の立場としてはどのように対応すればよいのでしょうか。
まず、セクハラ行為等を受けた場合、ひとりで抱え込まず、友人や保護者らに相談すべきです。指導者が学校の教員でもある場合には、学校の校長等に相談するのもよいでしょう。その上で、より専門的な機関の相談窓口に相談することも考えられます。そのうちの一つとして、日本スポーツ支援・研究センターが設けている「スポーツ相談室」が挙げられます。
同相談室は、スポーツ法の専門家がスポーツに関する法律相談全般を受け付けているもので(スポーツ相談室利用規約1条2項)、指導者(顧問)の持つ資格にかかわらず、セクハラ、パワハラ及び暴力等の問題を相談することができます。基本的に弁護士が相談にあたるため、相談内容の秘密は厳守されます。
また、指導者(顧問)が日本体育協会の公認スポーツ指導者資格を有している場合には、同協会が設けている「スポーツにおける暴力行為等相談窓口」に相談することもできます。日本体育協会は、相談を受けてセクハラ行為等の有無について事実確認を行い、指導者(顧問)に対して必要に応じて処分(注意、資格取消等)を科すことができます。
被害の内容によっては、以上の相談にとどまらず、指導者に対して治療費や精神的慰謝料等を求めるための不法行為責任を追及することも考えらえます。この点、指導者のセクハラ行為が問題となった裁判例(損害賠償請求事件)として、大阪地判平成20年5月20日(平成18年(ワ)第13014号)が、指導者の暴力行為が問題となった裁判例(損害賠償請求事件)として、前橋地判平成24年2月17日判時2192号86頁や東京地判平成28年2月24日判例時報2320号71頁があります。
弊事務所では、スポーツ指導の現場に限らず、様々なセクハラ、パワハラに関する法務を取り扱っておりますので、いつでもご相談ください。