最近の法律コラムでは、新型コロナウィルス感染症による影響とその法律問題について解説しています。3月のコラムでは、新型コロナウィルスの影響で会社や個人の破産が急増する可能性があることをお伝えし、4月のコラムでも、新型コロナウィルスと雇い止めや解雇に関するテーマでお伝えしました。
いわゆる「コロナショック」と呼ばれる経済への影響により、私たちの生活にどのようなことが起きるのでしょうか。その中の大きな問題の1つに「住宅ローンの返済ができない」という問題があります。
今は緊急事態宣言と外出・営業自粛が取り沙汰されており、まだ表面化していませんが、数か月後には必ず住宅ローンの問題が発生します。なぜなら、リーマンショックや東日本大震災の数か月後には、住宅ローン破綻した人たちが相次いで増加したからです。
新型コロナウィルス感染症の拡大により営業自粛や休業、解雇などを強いられ、収入が大幅にダウンし、住宅ローンの返済が少しずつ厳しくなってきている人がいるのではないでしょうか。
もちろん、政府や金融機関も黙ってこの状態を看過している訳ではありません。たとえば、各金融機関は新型コロナウィルス専門の返済相談窓口を設けています。そのため、住宅ローンの支払いに問題が生じた場合は、自分がローンを組んでいる金融機関にすぐに相談することをおすすめします。
というのも、住宅ローンの支払いが延滞してしまうと、遅延損害金(延滞金)が発生するばかりではなく、優遇金利制度が適用されなくなってしまい、住宅ローンの支払額が大幅に増額してしまう可能性を秘めているのです。
実は、ほとんどの人が見落としがちであるのが、住宅ローンの返済に延滞が発生したり、返済スケジュールを再検討(リスケ)する場合、優遇金利制度の対象外となってしまう可能性があることです。
私たちが不動産を購入し、住宅ローンを組む際には、店頭あるいはホームページに表示されている利率(店頭表示金利)より、低い金利でローンが組まれていることが一般的です。
これが、ほとんどの金融機関が採用している「優遇金利制度」とよばれる仕組みです。一般的な住宅ローンでは、店頭表示金利は2~3%程度で表示されていますが、実際に優遇金利制度が適用された場合、1%未満で返済をしていることが多いものです。
しかし、返済を延滞してしまうと、この優遇金利が適用されなくなり、店頭表示金利で返済を続けていかなければなりません。数字上では、利率が1%程度上がるだけですが、残高が高額な住宅ローンの場合ですと、返済額もその分大きく膨らみます。
たとえば、住宅ローンの残高3,000万を25年かけて返済する場合、店頭表示金利2.475%と優遇金利が適用されて0.645%とで返済するシミュレーションしてみますと、返済総額で780万円以上も増額してしまうことになります。
0.645%の場合 | 2.475%の場合 | |
---|---|---|
毎月の返済額 | 108,305円 | 134,207円 |
返済総額 | 32,507,522円 | 40,323,136円 |
※ボーナス返済額なし、諸費用なし、元利均等方式での返済の場合です。
※あくまでもシミュレーションによる試算結果であり、実際の金額とは異なります。
つまり、コロナショックにより、住宅ローンの返済が延滞して優遇金利が適用されなくなると、従来の返済計画が崩れてしまい、あっという間にローンの残債務額が膨れ上がってしまいます。今後の生活プランに大きな影響が出てしまう要注意事項なのです。
「新型コロナウィルスのせいだ、仕方がない」と自己判断して放置をしてしまうと、最悪のケースでは、金融機関から裁判所に自宅の競売手続を申し立てられてしまう可能性があります。
競売の場合、売却価格は市場価格よりも非常に低い金額で落札されます。そのため、マイホームを失うばかりではなく、多額の借金だけが残ってしまうという悲惨な状態に陥ってしまいます。
この点、不動産会社が住宅ローンの債務者と金融機関との間を仲立ちして、不動産の売却手続を行う「任意売却」という制度があります。この制度を用いた場合、
など、競売に比べて数多くのメリットが存在しています。実際に、住宅ローンの返済ができず、止むを得ずにマイホームを手放さざるを得ない場合、競売よりも任意売却を用いるケースの方が圧倒的に多いといわれています。
さらに、住宅ローンの返済の見通しが立たず、不動産を手放すことになった場合、決断が早ければ早いほど、不動産の価値は高い状態にありますから、当然ながら、売却価格も高くなります。
弊事務所では、住宅ローンの返済でお困りの皆さまに対して、金融機関との交渉から任意売却のご提案まで、お客さまにとってベストな解決方法をご提案いたします。手遅れとなり、多額の借金が残ってしまう前にぜひ一度ご相談ください。