先月のコラムで新型コロナウィルスの影響で破産件数が増加する可能性があることをお伝えしました。
新型コロナウィルスの影響で企業の業績が悪化すると、倒産件数が増加することはもちろんですが、その前に、従業員、特に契約社員など非正規雇用者にも影響が出る可能性があります。
これが、契約が更新されないという「雇い止め」や、契約期間中に契約を解除・解雇される「期間中解雇」という問題です。
厚生労働省によれば、4月6日時点で、新型コロナウィルスの影響で業績が悪化し、職場を解雇・雇い止めされたあるいはその予定の人は、1,400人を超えるとの調査結果が公表されています。
正社員はもちろんのこと、契約社員やアルバイト、パートタイムなどの非正規労働者も、労働基準法や労働契約法で保護されており、雇い止めや契約期間中の解雇には厳しい制限が存在しています。
そこで今月のコラムでは、新型コロナウィルスによる雇い止め・契約期間中の解雇が違法になるのかについて弁護士が解説します。
契約社員などの非正規雇用者は、昇進がない、賞与・退職金がない(あるいは少ない)など、正社員に比べて、様々な制限があります。
しかし、雇い止めや契約期間中の解雇の場合も、正社員に対する解雇と同様に、法律で定められた要件を満たしたり、段階を経ないと無効になる可能性があります。
具体的には、労働者が、今までの勤務状況から契約が更新されて当然であると期待している場合には、雇い止めが無効になる場合があります。具体的には、
などです。
このような場合には、形式的には契約社員だったとしても、正社員と同じ扱いとなります。そのため、下記に説明する整理解雇の4つの要件をすべて満たさなければ、企業側の都合で解雇することはできません。
①人員整理をしなければならない合理性・正当な理由がある
企業の経営が悪化し、人員整理をしないと経営改善が見込まれない場合などが該当します。また、怪我や病気などで、業務を行えない場合もこの要件に該当するでしょう。そのほか、人員整理を行うのと同時、あるいは直後に新規の人員募集を行った場合には、正当性が認められない場合もあります。
②解雇をする前に、様々な業務工夫を行っている
「事前に希望退職者を募集する」「役員報酬を一部削減する」などの場合が当てはまります。その他、今回のケースですと、政府や地方自治体などが打ち出している雇用助成金などの申請を行っているかも判断材料の1つにはなるでしょう。
③人選が妥当である
整理解雇の対象者についても、公正に選ぶ必要があります。業務内容や年齢、成績などを総合的に考慮して判断する必要があるでしょう。
④必要な手続きを行っていること
当事者や労働組合などに対してきちんと、整理解雇の必要性の説明や、協議を行っているかも重要なポイントの1つになります。企業側の一方的な整理解雇の通知だけでは、他の要件を満たしていたとしても、違法と判断される可能性があるので注意が必要です。
なお、厚生労働省は下記要件を満たす有期労働者に対し、雇い止めを行う場合は、契約が終了する30日前の事前予告が必要との告知(平成15年10月22日、厚生労働省告知第357号等)や、1か月に30人以上の離職者の発生が見込まれる場合には事前にハローワークに届け出なければならない旨の規定を定めています。
これら4つの要件を満たさない場合は、解雇が認められず、いわゆる不当解雇となります。
また、契約中であるにも関わらず契約を途中で打ち切る「期間中解雇」に関して、裁判所は、整理解雇の4つの要件以上に厳格な判断を行っています。
企業側にとって、雇い止めや期間中解雇が違法と判断された場合、損害賠償金という人員整理以上の多額な金銭負担が発生するだけでなく、ニュースで会社名などが報道された場合には、イメージダウンにもつながりかねません。
弊事務所では、新型コロナウィルス感染症の影響による労働問題でお悩みの事業主の方、労働者の方の相談を積極的に受け付けています。
どうぞご遠慮なくご相談ください。