豊田真由子・衆議院議員に対して、元秘書への暴言・暴行疑惑が持ち上がり、大きな話題となっています。被害者(元秘書ら)によって公表された録音データを聞いてみると、確かに、通常の指導・指摘の範囲を大きく逸脱した行為のように感じられます。
そこで今回は、パワーハラスメント(通称パワハラ)について取り上げたいと思います。
厚生労働省は、職場におけるパワハラについて、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。
職場での優越的な地位を利用する嫌がらせですので、典型的には、上司から部下に対するものですが、同僚であっても先輩から後輩に対するものや年上から年下に対するもの、職務上の専門性等によっては部下から上司に対するものも考えられます。
パワハラには多様な具体例が考えられますが、厚生労働省は、典型的なパワハラ行為について、以下の6つに分類しています。
厚生労働省が従業員に対して調査を行ったところ、パワハラを受けても「何もしなかった」と回答した方が46.7%と最も多くなっています。「何もしなかった」者の属性を見ると、性別では男性(53.5%)、年代別では40才代(50%)、「性・職種別」では管理職(60%)と男性正社員(52.5%)が高くなっています(「平成24年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」厚生労働省 2012年)。
パワハラによる被害を受けたとしても、「職場を追われるのではないか…」、「周囲の目が気になる…」などという思いから、声を上げられない方々が多いのが現状のようです。
しかし、職場でのひどい嫌がらせや暴行などにより、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神障害を発症する人は増加傾向にあります。心や体が壊れてしまう前に、声を上げる勇気を持つことが大切です。
パワハラの相談窓口として、総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)、みんなの人権110番(法務省)などが設けられていますが、弁護士に相談することで、早期に以下のような民事上の請求(慰謝料、治療費、休業補償等)や労災認定を求めたり、刑事上の処罰を求めたりすることができます。
・加害者に対して
パワハラ行為を行った加害者本人に対しては、民法709条(不法行為)にもとづく損害賠償請求を行うことができます。
・企業に対して
使用者(企業)は、被用者(従業員)の選任・監督について責任を負っています。そのため、従業員が労務に関連して行ったパワハラについては、企業に責任を問うことが可能です(民法715条使用者責任)。また、雇用管理上の必要な措置を講ずる義務を怠ったとして、企業側に固有の責任(債務不履行責任)を問うこともできます(労働契約法3条・5条、民法415条)。
・労働基準監督署に対して
パワハラで精神障害等に罹患したにもかかわらず、加害者や企業がパワハラの存在を認めなかったり、十分な補償を得られなかったりした場合でも、労働基準監督署に労災認定されれば、国から、慰謝料、治療費、休業補償等の一定の補償が得られる可能性があります。
・警察・検察に対して
暴行・暴言行為については、行為の内容・被害の程度に応じて、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(同208条)、名誉棄損罪(同230条)、侮辱罪(同231条)などが成立する可能性があります。
これらの請求(告訴)を行うにあたっては、ハラスメント行為の立証が必要です。具体的には、加害者及び被害者の供述や客観的な証拠(日記・メモやノート、従業員や家族など関係者による陳述、ボイスレコーダーによる録音、カメラ・携帯電話を利用した撮影など)を揃えた上で請求を行います。
弁護士にご相談いただければ、被害状況を把握した上で、的確にサポートすることが可能です。また、パワハラが横行している職場は、残業代の未払いなどの他の労働問題も抱える、いわゆるブラック企業であるというケースも多いかと思いますので、そのような事例についてもトータルにご相談に応じることができます。
弊事務所は、パワハラ、不当解雇、給与未払いなどの労働問題にも積極的に取り組んでおり、多数の実績やノウハウを有しております。少しでもお悩みがございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。