共同親権とは、離婚後でも、父親と母親の双方に親権を認める制度のことです。
親権は、子どもの財産を管理する「財産管理権」と、実際に子どもの世話をする「身上監護権(監護権)」に大別されます。
現行の法制度では、婚姻中は夫婦共同で親権を行うことになっていますが(共同親権の原則:民法第818条3項)、離婚する場合は、どちらか一方を親権者として決めなければなりません(単独親権の原則:民法第819条1項)。
そのため、日本では共同親権が認められていないのが現状です。
もし、共同親権が導入された場合、離婚した父親・母親の双方に親権が認められることになります。そのため、離婚後でも、双方が子育てなどに積極的に関わることができます。
その一方で、共同親権を認めることのデメリットもいくつか考えられます。
そこで、今回のコラムでは、共同親権のメリットや注意点、認められた場合の影響などを、離婚問題に詳しい弁護士が解説していきます。
そもそも「共同親権」の導入が検討され始めた背景には、どのような理由があるのでしょうか。
たとえば、現行の離婚制度では、離婚をする時に父母のどちらか一方を親権者に決めなければならないことが原因で、親権の争いに発展してしまい、円滑な離婚が実現できない場合があります。
また、親権を得られなかった親と子どもが疎遠になるなど、子どもの生育上望ましくない環境になりかねません。
さらに、養育費の支払いを受けられない、面会交流ができないなど、さまざまな不利益が発生する可能性があります。
このような理由から、共同親権の議論が行われ始めたのです。
この点、2022年(令和4年)12月現在、法制審議会の家族法制部会において、共同親権や離婚法制に関する「中間試案」がまとめられました。
中間試案では、共同親権について、①原則として共同親権とする案、②現行の単独親権を維持する案、③夫婦の実態に合わせて双方を選択可能にする案の3つがまとめられました。
中間試案に関する詳細は、下記のホームページをご覧ください。
単独親権と共同親権の大きな違いは、離婚後の子育てを、一方の親のみが責任を持って行うのか、あるいは、共同で親権を行うのかという点です。
単独親権の場合、親権者となった親は、1人で子育てに関する全責任を果たす必要があり、大きな負担がかかります。
一方で、共同親権の場合は、離婚して婚姻関係が解消されても、双方が親権者であることは変わりないので、子育てに関する責任をある程度分け合うことができるでしょう。
また、子どもにとって両親であることに変わりはありませんから、父親・母親の双方と接することができ、子どもの成長によい影響を与えることでしょう。
このように、単独親権と共同親権とでは、離婚後における親権のあり方が、大きく異なるのです。
それでは、共同親権を導入することの具体的なメリットについて、解説していきます。
現行の単独親権では、親権者になれなかった親は、面会交流を除いて、子どもに会う機会がほとんど失われてしまいます。
そのため、双方が親権を得ようと争いに発展することもあり、議論が長期化してしまう可能性があります。
この点、共同親権が認められると、双方を親権者とする選択ができるようになりますから、以前に比べて、離婚時の協議が長期化せずに済むと考えられます。
子どもの健全な成長のためには、両親と接することが必要ですので、離婚時には面会交流を取り決めることが大切な手続きになります。
ただし、離婚時に取り決めたとしても、親権者の都合によって日程を変更されることや、事実上、親権者の許可がなければ子どもに会えないような構図になるなど、スムーズに面会交流が行われないことが少なくありません。
このような状況になってしまった場合、親権を得られなかった親は、子どもに会いづらくなることから不安な思いをすることでしょう。
この点、共同親権であれば、子どもと暮らせていなくても親権者であることには変わりありませんから、面会交流も実施しやすくなるでしょう。
なお、面会交流は、子どもの気持ちや生活リズムに配慮したうえで、子どもの利益になるように実施しなければなりません。
子どもの気持ちに配慮しないで実施することは望ましくないため、子どもの意見をしっかりと尊重したうえで、面会交流を取り決めましょう。
たとえ親権者ではなくても、子どもの親であることには変わりありませんから、子どもの今後の生活のために養育費を支払う必要があります。
しかし、中には、最初から養育費を支払わなかったり、途中から支払いが滞ったりするケースがあります。
これは、単独親権では、面会交流が行われず、子どもに会えないのに養育費を支払わなければならない状況に不満を抱き、モチベーションが下がることなどから、養育費の支払いが滞ってしまうという原因もあるようです。
この点、共同親権であれば、自分も親権者であるという自覚が生まれることから、単にお金だけ支払うという構図にはならず、養育費を払わないという無責任な行為はとらないでしょう。
このように、面会交流のしやすさや、子育てに対する責任感から、養育費の支払いが円滑に行われることが期待できます。
これまで解説した通り、共同親権の導入にはさまざまなメリットがありますが、反対に、注意点もいくつかあります。
現行の単独親権では、離婚することにより、DVやモラハラなどをする配偶者から事実上逃れることができます。
また、このような場合には正当な理由があるとして、面会交流なども拒絶することができますので、離婚後は会わずに済みます。
しかし、共同親権が原則となった場合、DVなどをしていた配偶者も親権者となりますから、このような配偶者から逃れられなくなることが懸念されています。
共同親権となった場合、子どもと一緒に住んでいない親は、子どもに会いやすくはなりますが、子どもや親権者である親にとっては、面会交流の時間を作る手間が生じてしまい、負担が増える可能性があります。
面会交流のために、離婚した元夫婦同士で連絡を取り合わなければなりませんし、子どもも面会交流のための時間を作る必要が出てきます。
子どもの成長に合わせた頻度で、適切に面会交流を行っていく必要があるでしょう。
このように、共同親権の導入には、考慮しなければならないさまざまな問題があるのです。
親権者を決めることは、現行の単独親権の制度であっても、夫婦の事情などを個別具体的に判断していく必要がありますが、共同親権が導入された場合には、さらに複雑な議論や判断が必要になってくるでしょう。
単独親権にしても、共同親権であっても、子どものその後の生活に影響を与えかねないため、専門的かつ慎重な判断が必要になります。
離婚そのものに対するお悩みや、親権、財産分与などについて、少しでも不安なことがありましたら、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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そして、離婚相手と直接会ったり、話さずに済むという大きなメリットがあります。これは精神的・時間的な負担を減らしてくれるでしょう。
間違いのない内容の離婚条件で後悔しない離婚をするためにも、離婚や親権の取り決めについて、お悩みがございましたら、遠慮なく弁護士にご相談ください。