終活離婚は、「終活」と「離婚」を組み合わせた造語で、終活として離婚を選択することを指します。
そもそも終活とは、人生の最期に向けて、身の回りの物品・財産などを整理する「生前整理」や、亡くなったときのために葬儀やお墓などを取り決めておく相続の準備など多岐に渡り、自分のエンディングをあらかじめ決めておくことをいいます。
すべてが取り決め通りに進むとは限りませんが、終活を行っておくことで、家族の負担を減らすことができるでしょう。
しかし、終活離婚を行うためには、まずは夫婦で話し合う必要があります。
夫婦が離婚をする場合、さまざまな離婚条件を取り決める必要があり、一方の意思のみでは離婚を成立させることはできません。
特に、長年連れ添った夫婦であればあるほど、離婚のために取り決めるべきことが多いと思われます。
終活離婚をしたいからといって、すぐに離婚が実現するとは限らないでしょう。
そこで今回のコラムでは、終活離婚のメリットや注意点など、弁護士ならではの視点で解説していきます。
終活離婚を検討している方は、参考にしてみてください。
詳しいメリットは後述しますが、終活離婚を選択することにより、今後の余生を自由に過ごすことができる、配偶者の親族との関係を終了することができるなど、さまざまな利点があります。
このようなメリットがあることから、終活離婚を選択する人が増加していると考えられます。
なお、終活離婚とよく似た言葉に「熟年離婚」と「死後離婚」があります。
熟年離婚は、単に、長年連れ添った夫婦(約20年以上)が離婚をする場合を指すといわれており、必ずしも終活を目的とした離婚ではありません。
次に、死後離婚は、配偶者と死別した際に、姻族との関係を終了させる手続きのことを指します。
法的には、「姻族関係の終了」(民法第728条2項)といい、市区町村役場に、「姻族関係終了届」を提出することにより、死別した配偶者の親族との姻族関係を終わらせることができます。
これにより姻族関係は終了しますが、死別した配偶者の遺産相続を受けることはできますし、要件を満たしている場合には遺族年金も受給できます。
婚姻期間の長い夫婦が、性格の不一致などの理由により離婚する場合は熟年離婚という扱いになりますが、終活として将来の自由な時間の確保などを目的にしている場合には、終活離婚という扱いになるでしょう。
そして、終活離婚では、終活を目的として、熟年離婚または死後離婚を選択していくことになります。
それでは、終活離婚を選択した場合のメリットについて解説します。
終活離婚を選択する最大のメリットとしては、離婚後の余生を自由に過ごすことができる点です。
これまでの夫婦生活では、金銭面や気づかいなど、さまざまな不都合やストレスが生じることもあったかと思われますが、終活離婚を選択することにより、自分の時間を確保することができ、趣味などにも没頭できるようになるでしょう。
また、配偶者の親族との姻族関係を終了させることも可能です。
配偶者の親族と不仲である、嫁姑問題など、姻族との関係に悩みがある場合には、終活離婚を選択することにより、解消することができるでしょう。
そして、配偶者の親族への介護の負担が無くなるという点も挙げられます。
配偶者の親族との関係に悩みがある際には、終活離婚を検討してみるとよいでしょう。
このように、終活離婚には、さまざまなメリットが考えられますが、実際に終活離婚を選択する場合には、いくつか注意点があります。
終活離婚をした後は、孤独な生活を過ごす可能性があります。
特に、定年退職をしている場合や専業主婦(主夫)であるときには、1人でいる時間が長くなる可能性が考えられます。
また、子どもがすでに自立している、家庭のある友人が多いなどの場合も、周囲の人と過ごす機会が減ってしまうでしょう。
これまでは夫婦で生活をしており、いつも話し相手が近くにいましたが、終活離婚によって1人になってしまい、孤独感を感じることもあるようです。
終活離婚をする際には、夫婦の婚姻期間が20年以上など、一定年数以上である場合が想定されます。
そのため、夫婦で築き上げた共有財産(婚姻中に協力して築いた財産)の種類が多く、その金額も高額になることでしょう。
離婚する場合、財産分与について話し合う必要がありますが、夫婦間での話し合いでは、まとまらない場合や内容が不適当になる可能性があります。
また、相手に財産をすべて取られたり、勝手に処分されてしまうリスクもあります。
このように、終活離婚を行う場合は、慎重に判断すべきことが多いのです。
次に、終活離婚を成立させるために留意すべきポイントについて、解説します。
終活離婚に関わらず、離婚をするには夫婦間で話し合う(協議)必要があります。
夫婦の一方が終活離婚をしたいと考え、突然話を切り出したとしても、もう一方の配偶者が、すぐに合意するとは限りません。浮気や不倫などのあらぬ疑いをかけられてしまうこともあり得ます。
終活離婚をしたい理由などを明確にしてから、話を切り出すとよいでしょう。
また、終活離婚の場合は、婚姻期間が長いことから、子どもがすでに成人しており、自立や結婚しているなどのケースがあります。
この点、子どもの親権や養育費などは協議の対象にはなりませんが、婚姻期間が長いことから、財産分与や年金分割などで争いになる可能性が考えられます。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築き上げてきた共有財産を分け合うことをいいます。
財産分与は、原則として2分の1ずつ分け与えることになりますが、婚姻生活の実態や貢献度に応じて、割合が変動する場合もあります。
具体的な財産分与の対象は、現金、預貯金、不動産(土地や建物)、動産(自動車や家具など)、保険金、ゴルフ会員権といった財産や、住宅ローンなどの借金も対象となります。
婚姻期間が長いほど、財産分与の対象が多岐に渡り、貢献度も変わる可能性があるため、円滑に話し合いが進まないことも考えられます。
また、財産分与は、離婚が成立してから2年以内に請求する必要がありますので、注意が必要です。
次に、離婚する際には、婚姻期間中に納付してきた年金の取り扱いについても、話し合う必要があります。
たとえば、婚姻期間中に夫が会社員として働いており、妻が専業主婦であった夫婦が離婚する場合、互いに年金保険料の支払いに貢献してきたにも関わらず、離婚後に受給できる年金額に差があることは不公平です。
このような不公平を是正するために「年金分割」の制度が定められています。
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の方法があり、3号分割では、専業主婦(主夫)の方1人のみで請求することができます。
終活として熟年離婚を選択する場合、婚姻期間が長いことが想定されますから、婚姻期間中における厚生年金記録も長期に渡ることでしょう。
この記録を分割するための話し合いが必要になり、「年金分割のための情報提供請求書」や「標準報酬改定請求書」などの書類を作成する必要もあります。
婚姻関係にある夫婦の一方が亡くなった場合、もう一方の配偶者は常に相続人となりますが、終活として熟年離婚をした後に元配偶者が亡くなったときには、婚姻関係を解消しているため、相続人になることはできません。
ただし、子どもについては、両親が離婚をしても親子関係は変わらないため、子どもは相続人となります。
そして、終活として死後離婚を選択した場合、これは夫婦間の婚姻関係を解消する手続きではないため、死別した配偶者も相続人となり、相続を受けることができます。
このように、終活離婚の方法によって相続の取り扱いが異なります。自分の状況に適した方法で終活離婚の方法を選択する必要があるでしょう。
夫婦間の協議で離婚が成立しなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を交えながら話し合いを進めることになります。
それでも離婚が成立しなかった場合には、離婚裁判を申立て、裁判所の判決をもって離婚する方法(判決離婚)があります。
終活離婚の場合でも、財産分与などの問題が発生してきますから、自分で離婚の手続きを進めることが難しい場合があるでしょう。
このような場合には、離婚に関する手続きの専門家である弁護士に相談することで、円滑な終活離婚を実現することができるでしょう。
また、弁護士に相談・依頼をすることで、離婚に関するトラブルを未然に防止できたり、正しい内容で財産分与ができたりするなど、さまざまなメリットがあります。
弁護士法人プロテクトスタンスでは、離婚に関する取扱実績が数多くあり、離婚相談については初回30分を無料にて承っており、土日祝日にも対応をしております。
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