皆さま、こんにちは。行政書士の谷川桃子です。
2020年の東京オリンピックが再来年と迫っており、時の早さを実感しております。オリンピックといえばスポーツはもちろんですが、海外の方々にはぜひ日本文化や日本食にも興味をもっていただきたいです。
日本の食べ物は味のレベルが高く、美味しいという話はよく聞きますよね。
それでは、衛生面は海外と日本どちらがより力を入れていると思いますか?
なんとなく、日本人の食への意識の高さから衛生管理でも海外より力を入れているとお考えになる方が多いかと思います。
でも実は、海外の方が日本よりも厳しく食の衛生管理を行っているのです!
ここで、今回のコラムのテーマである「HACCP」についてご説明させていただきます。HACCPとは食品衛生管理の手法です。読み方は「ハサップ」と読むのが一般的で、発音記号に直すと「ˈhæsʌp」です。
もともとは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が健康被害のリスクを排除するため、安全な宇宙食を作る目的で開発したHACCP制度ですが、国際食品規格委員会(CAC)が「これは良いシステムだ」と考え、一般飲食に合わせた形で取り入れられました。
「Hazard(危害)Analysis (分析)Critical (重要)Control (管理)Point (点)」の頭文字から取って、HACCP(ハサップ)と呼ばれており、危害となる要因の分析をしたうえで、その防止のため特に重要な工程を継続的に監視・記録する工程管理システムの呼称です。HACCPを制度化するというのは、この「危害を分析→防止工程を作る→監視→記録する」というシステムを製造工場や飲食店の作業ラインに取り入れることを意味しています。
先ほど、海外の方が日本よりも厳しく食の衛生管理を行っていると申し上げましたが、これは海外で多くの国がHACCPを義務化しているという理由からなのです。米国では、水産物やジュース・食肉等はHACCPの導入が義務化、米国内で消費される食品を製造や保管する全施設にはHACCPの概念を取り入れた措置の計画と実行が義務化されています。EUでも、一次生産を除くすべての食品の生産・加工・流通事業者にHACCPの概念を取り入れた衛生管理を義務付けしています。台湾では食肉・乳製品・水産食品等の事業者にHACCPの義務化がされており、韓国では空港に置いてある食品はすべてHACCPのマークがついて販売されています。
この世界基準の衛生管理であるHACCPを、オリンピックに向けて日本にも導入する動きが始まっております。すでに東京オリンピックに向けた食品衛生法等の一部を改正する法案が提出されており、改正された場合は、今後すべての飲食店や食品製造業者がHACCPを書類にて作成し、保管することが義務付けられます。
一般飲食店 | ラーメン 寿司 定食 ファミリーレストラン 居酒屋 焼肉 イタリアン 中華 |
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製造・加工業 | ケーキ 豆腐 パン 和菓子 精米工場 酒造メーカー 清涼飲料メーカー 精肉店 |
配食産業 | 病院・介護施設・学校等への給食センター 宅配ピザ |
運送業 | 冷凍車 冷蔵車 (食品運搬車) |
倉庫業 | 冷蔵倉庫 冷凍倉庫 |
小売業 | コンビニエンスストア スーパーマーケット 道の駅等 |
風俗営業関係 | バー スナック クラブ 漫画喫茶等 |
旅館業関係 | 旅館 ホテル 民宿等 |
重要食堂 | 介護事業所内食堂 病院内食堂 保育園内食堂等 |
これらの業者はすべて、HACCPを遵守する必要があり、保健所が監査にて立入した際にHACCPの書類を確認されることになります。これに従わない場合、地方自治体から行政指導が行われます。行政指導に従わず、人の健康を損なうおそれがある食品を製造等した場合には、改善が認められるまでの間、行政はその施設の営業許可の取り消し、営業の全部もしくは一部の禁止、または一定期間の停止を行うことができます。さらにそれらの行政処分に従わずに営業を行った場合には、罰則が適用されます。
ですが、それよりも顧客からの信頼を失うことが事業者としては1番の致命傷となるでしょう。衛生管理の制度に従っていなかったことが判明すれば顧客の信頼を失うとともに、SNSなどで拡散され、風評被害まで広がることも予想されます。一度失った信頼を取り戻すことは難しく、その後たとえ改善したとしても、顧客の脳裏には衛生管理義務を怠った事実が永遠に残ります。
安心して食を楽しんでもらうには、信頼が必要です。そして信頼を作るには、実績のある衛生管理を導入し、それをアピールしていく必要があるでしょう。HACCPの制度を遵守している食品事業者であるとアピールすることは、顧客の安心と信頼、そして事業のブランド力に繋がります。2020年に備え、早い段階から事業にHACCPを導入し事前に準備をしておくことは賢明ですし、他の食品事業者と差別化を図れるのではないでしょうか。また、すでにHACCPを導入されている食品事業者の方はHACCPよりも更に高度な食品衛生管理手法である「FSSC22000」、「ISO22000」、「ISO9001」へのステップアップを目指すことで更なるブランド力向上が期待できるでしょう。
※イメージです。
ご本人で作成することは不可能ではありませんが、雛形がない&煩雑な書類の作成が必要なことから時間がかかるでしょう。そのため、行政書士に依頼することによってスムーズな書類作成が可能です。HACCPの作成制度は新しい業務のため、これらを行える行政書士は国内でもまだ限られておりますが、グループ法人である行政書士法人にはHACCPの作成に詳しい行政書士が所属しておりますので対応が可能です。なお、HACCPの作成業務は官公庁への許認可申請となるため、行政書士の独占業務となっております。
楽しいオリンピックの年を迎えられるように、安心安全な食の提供を目指す皆さまのお手伝いをさせていただければと思います。
ぜひ、ご相談くださいませ。