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相続の判例と弁護士の役割

相続問題

皆さまこんにちは。
今回のコラムを担当させていただきます、弁護士の八木田でございます。
 
私は一般民事事件の中では、男女間・夫婦間のトラブルや相続問題を主に担当させていただいております。
 
先日、相続のご相談をいただきまして事情をお伺いしてみますと、公正証書によって「相続させる」旨の遺言があるのですが、その中で遺産の名宛人とされている推定相続人の方が相続発生前に亡くなっているとの事案でした。
 
公正証書によっては、名宛人の方が先に亡くなった場合にどのように相続させるのかについて明確に規定しているものも少なくありませんが、今回のご相談時に拝見した物には、そのような取り決めがありませんでした。
 
このように、「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合、当該遺言の効力はどうなるのかが問題となります。もしこのような遺言が有効であるとすると、代襲相続のような状態になりますが、反対に無効となりますと、その部分については遺言で定められていない状態となります。
 
なお遺贈については、民法994条1項に「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」とあり、明確に決まっていますが、遺言の場合については明確な規定が無く、従前は下級裁判所でも判断が分かれている状況でした。
 
これに一定の解決を示したのが、最高裁判所平成23年2月22日判決(民集 第65巻2号699頁)です。判旨を引用させていただきます。
 
「「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」
 
この判例の存在により、「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合の遺言の効力については、原則として効力を生じないとの取り扱いになるわけですが、ここでご注意いただきたいのが、あくまで原則であって、「特段の事情」がある場合には例外として結論が異なる余地が十分にあるという事です。
 
相続に限らず全て事件は生きていて、案件ごとに当事者の思いや着目すべき事実、最適な法的構成が異なります。それゆえに我々弁護士の存在意義があるように感じます。
 
対応方法は事案ごとに千差万別ですので、お一人で悩まずに弊事務所までご相談いただければと思います。

この法律コラムは
弁護士法人プロテクトスタンスがお届けしています。

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弁護士法人プロテクトスタンス 代表弁護士 五十部 紀英