何度も督促しても、取引先が売掛金や請負代金を支払わないケースがあります。このような場合は債権回収が必要になりますが、その手段の1つとして、「支払督促」を裁判所に申し立てるという方法があります。
今回のコラムでは、支払督促について、そのメリットとデメリットを中心に、弁護士がわかりやすく解説します。
相手(債務者)の住所地など所在地を管轄している簡易裁判所に対して、「支払督促申立書」という書類を作成・提出し、裁判所を利用した督促を行うものです。支払督促の申立てを受けた裁判所(正確には裁判所の書記官)は、申立書類を審査し、不備がなければ支払督促の正本を相手に送達することになります。
支払督促には3つのメリットがあります。それは、①手続きが簡易であり、②通常の訴訟よりも手続きの費用が安く、③強制執行の準備ができる点です。
①について。支払督促の申立書は指定の書式にもとづき、必要事項を埋めるだけで作成することができますので、訴訟における訴状を作成するような大変さがありません。
②について。支払督促では、裁判所に納付する収入印紙(裁判手続を利用するのに必要な手数料)が、通常の訴訟の半額になります。
③について。裁判所から相手に支払督促が送達されてから2週間が経過しても、相手から異議の申立てがなければ、債権者(債権を回収する側)は「仮執行宣言の申立て」を裁判所にすることができます。
少し難しい話になりますが、「仮執行宣言」とは、裁判が確定する前に強制執行することができる効力を仮に与えておくことであり、これがあれば、相手の財産に対して強制執行をすることができるようになります(仮執行宣言付支払督促は確定すれば債務名義となる)。手続きの流れとしては、申立て後に簡易裁判所の書記官が調査し、仮執行宣言の要件を満たしていた場合に、「仮執行宣言付支払督促」が出されることになります。
しかし、支払督促の送達を受けた日から2週間経過する前に、相手から異議の申立てがなされてしまうと、債権者は「仮執行宣言」を申立てることができません。
支払督促の大きなデメリットとして、相手に異議申立ての機会が与えられてしまうという点です。前述しましたが、支払督促の送達を受けた後2週間以内に、相手から異議申立てがあった場合、その支払督促は失効してしまい、通常の訴訟に移行されます。結局、通常の訴訟に移行してしまうのであれば、時間も費用も無駄になってしまうのです。
また、支払督促に仮執行宣言が付いて強制執行の準備ができたとしても、強制執行には時間も費用もかかりますから、最悪の場合、かかった諸手続きの費用が回収できた債権額を上回ってしまうという、費用倒れの可能性も出てきてしまいます。
支払督促のメリットとデメリットをまとめると、支払督促は、手続きが簡易で、通常の訴訟よりも費用が安く、強制執行の準備ができるというメリットがあるものの、相手から異議が申し立てられれば、通常の訴訟に移行してしまうというデメリットがあります。
債権回収は戦略的な駆け引きや専門的な知識が必要です。相手の状況次第では、はじめから通常の訴訟を起こした方がよいというケースもありますし、より確実に債権を回収するための最適な手段を選択しなければなりません。
弊事務所では、日々数多くの債権回収業務に取り組んでおりますし、過去に多数の債権回収に成功した実績とノウハウがあります。また、弁護士への初回30分のご相談は無料です。債権回収でお困りの場合は、ぜひご相談ください。