督促をしたり支払期限を延ばしたりしても、相手が売掛金などを約束通り支払わないようなケースがあります。このような債権回収の場合、相手が最後まで支払いに応じなかったときは、強制執行の手続きを取ることになります。
強制執行とは、裁判で勝訴判決を得たり、相手(債務者)との間で裁判上の和解が成立したにもかかわらず、債務が返済期限通りに支払われなかった場合、裁判所から相手の財産を差し押える命令を出してもらい、債権を回収する手続きです。
強制執行の手続きは、主に不動産への強制執行・動産への強制執行・債権への強制執行の3つに分類されます。今回のコラムのテーマは、相手が保有する債権(預貯金・売掛金・貸付金など)を強制的に回収する、「債権執行手続」について弁護士がわかりやすく解説します。
債権執行手続には「債務名義(さいむめいぎ)」を取得し、「執行文(しっこうぶん)の付与」を受け、「送達証明書」を取得することが必要になります。
債務名義とは、強制執行により実現される請求権の存在および範囲を示したもので、強制執行の基礎となる公の文書のことです。代表的なものとして、確定判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などがあげられます。執行文の付与とは、債務名義の末尾に、強制執行を認める文書である執行文を付けてもらうことをいいます。送達証明書とは、債務名義の正本が債務者(相手方)に間違いなく届いている状態にあることを証明する文書のことです。
裁判所を通じて、このような準備が必要となる理由は、債務者が債務を履行しなければならないことを知り得る立場でありながら、なお債務の履行をせず、強制執行が可能な状態であることを明らかにしなければならないからです。これにより、はじめて強制執行が可能な状態となります。
まずは、相手の所在地を管轄する地方裁判所に債権差押命令を申し立てます。同時に、第三債務者へ陳述催告を申し立てることも一般的です。突然、難しい言葉が出てきましたので、わかりやすく解説しますね。
第三債務者(だいさんさいむしゃ)とは、債務者(売掛金などを支払わない相手方)が有する債権(預貯金や別の売掛金)の債務者(金融機関や別の販売先など)のことをいいます。陳述催告の申立とは、差し押さえの対象となる債権が存在しているのか、金額はいくらであるのか、支払う意思があるのかなどについて、第三債務者に回答を求めることをいいます。
債権者から債権差押命令が申し立てられると、裁判所は債権差押命令を出し、第三債務者→債務者の順で、債権差押命令がそれぞれに送達されます。なぜこの順番かといいますと、債務者に先に差押命令が届いてしまうと、銀行から預貯金を先に引き出されてしまい差し押さえが無意味になるからです。そして、相手に債権差押命令が送達されてから1週間が経過すると、第三債務者から債権の回収ができるようになります。
債権差押命令にもとづいて第三債務者から債権を回収する場合、いくつかのパターンに分けることができます。
まず、債権者が1人の場合です。この場合、第三債務者から債権を直接回収することができます。もしも、第三債務者が取り立てに応じなかった場合には、別途、第三債務者に対して取立訴訟を提起する必要があります。
次に、債権者が複数の場合です。この場合は裁判所によって各債権者に各債権額に応じた分配がされることになります。第三債務者は、特定の債権者に弁済してしまうことがないよう、法務局に供託を行わなければなりません。
最後に、第三債務者に差押債権がなかった場合、つまりは銀行残高がなかったり、別の売掛金が実は無かったりしたときは、債権差押命令を取り下げることになります。なお、このような残念なケースに遭わないように、事前に仮差押の手続きをしておくことができます。詳しくはこちらのコラムを参考にしてください。
なお、相手の給与や退職金を差押える際は、その4分の3に相当する額の差押えは禁止されています。ただし、給与に関しては、33万円を超える額に関しては全額差押えることができます。また、年金債権や生活保護費に関しては差押えることができません。
以上の手続きは、一般の方でも行うことが可能ではありますが、弁護士に依頼した方が、より有利に債権執行手続を進め、債権を回収できる可能性が高くなります。
弁護士は、第三債務者の調査を含めた債務者の資産調査から行うことができます。債権執行によって、債権を回収するためには、「相手方(債務者)に差し押さえることができる債権はないのか」、まずは調査することが必要です。経験豊富な弁護士であれば、相手方の有する複雑な債権債務関係を的確に把握することができます。
そして、債権差し押えは戦略的な手続きの進め方が必要です。せっかく取得した債務名義を(言葉は悪いですが)ただの紙切れにしないためにも、専門家に任せた方がよいでしょう。もちろん、色々と面倒な書類作成や申し立てを弁護士が一貫して代行することで、債権回収にとって大切なスピードを優先し、精神的な負担をも軽減することができます。
累計100社以上の顧問先実績を持つ弊事務所では、数多くの債権を回収した実績・ノウハウがあります。複数の弁護士でプロジェクトチームを組み、秘密裏に資産調査を行い、多方面の債権回収を一斉に仕掛けるなど戦略的な取り組みを行っております。弁護士へのご相談は初回30分無料です。債権回収でお困りの場合は、ぜひご相談ください。