警察庁の統計によると、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、多くの人が外出を控え、交通量が減少したとされています。
実際に、今年の1月から9月までの交通事故の発生件数は、例年に比べて、全体で2割ほど少なかったとの調査結果が公表されました。
その一方で、同じ期間の交通事故の死亡者数は、13の都県で例年より数%~数十%上昇したという真逆の調査結果も公表されました。
なぜ、交通事故の件数が減ったにも関わらず、死亡事故が増加したのでしょうか。
この要因については、交通量の減少により道路が空いて、スピードを出す車が増えた、または、新型コロナウィルス騒動が心理的に影響してしまい、注意力が散漫になったなど、様々な指摘がされています。
これから12月を迎えますが、1年の中で12月は、最も交通事故や死亡事故が発生しやすい時期でもあります。
そこで、今回は、交通事故の被害に遭ってしまった場合、どのように対処すべきなのか、弁護士が解説します。
交通事故に遭った場合、被害者・加害者ともに、自分が加入中の保険会社が当事者の代わりに示談交渉を行い、賠償額の金額などが決まるケースがほとんどです。
しかし、様々な場面において、保険会社によるこの示談代行サービスを使えない場面に遭遇する場合があります。
それは、自分自身にまったく過失のない交通事故に遭ったときです。
自身に過失が全くない交通事故とは、駐車場や信号待ちでの完全な停止中に後ろから追突されたような、いやゆる「もらい事故」が代表例です。
そのほか、対向車がセンターラインを越えて衝突してきたときも過失がゼロの事故となる場合があります。
これらの事故の場合、被害者は、自身が加入している保険会社の示談代行サービスが使えず、自分自身で交通事故の相手や相手が加入している保険会社と、賠償金の示談交渉を行わなければなりません。
そのような状況に遭遇した場合、交渉相手の加害者本人が交渉に応じなかったり、交渉のプロである保険会社にうまく丸め込まれそうになるなど、様々なリスクが懸念されます。
これらのリスクを回避するには、法律と交渉のプロである弁護士に交通事故の示談交渉を依頼するのがベストの方法です。
しかし、弁護士に依頼をすると、弁護士費用なども発生してしまうことになります。
実は、この弁護士費用などの諸費用を保険会社が支払ってくれるオプション(特約)があります。それが、「弁護士費用特約」です。
この弁護士費用特約の適用範囲は非常に広く、自分自身のみならず同居中の親族など幅広い範囲で利用することができる優れものです。
弁護士費用特約の適用範囲 |
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もちろん、この弁護士費用特約は、自分や家族にまったく過失がない交通事故のみならず、過失のある交通事故の示談交渉の場合も利用することができる強い味方です。
ある保険会社の調査によれば、自動車の任意保険の契約者の6割以上が弁護士費用特約に加入しているとの調査結果が公表されています。
その一方で、保険会社から指摘されるまで、自身に弁護士費用特約が付いていたことを知らなかったという方が非常に多いと言われています。
弁護士費用特約は、自動車保険以外にも、火災保険や賃貸借契約時の保険にも付いている場合があります。
せっかく、毎月保険料を納めているわけですから、いざとなったときに慌てないよう、加入中の各種保険に弁護士費用特約が付いているか否か、確認しておきましょう。
交通事故の被害に遭ったとき、保険会社の示談代行サービスが使えたとしても、弁護士に示談交渉を依頼した方が、賠償金の増額が期待できる場合があります。
次はこれについて詳しく見ていきましょう。
交通事故の被害者が加害者に対して請求できる賠償金の中には、通院治療費などの実費のほかに、慰謝料があります。そして、慰謝料には、次の2つがあります。
2-1.通院や入院で会社を休んだ日数が長い場合
交通事故のケガによる通院や入院の慰謝料は、通院や入院した期間に応じて算出されます。
実は、この慰謝料を算定する基準が、任意保険会社と弁護士とでは大きな差があります。
入通院慰謝料の算定基準の違い(一例) | ||
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入通院期間 | 任意保険基準 | 弁護士基準 (他覚症状あり) |
通院1か月 入院なし | 12万6000円 | 28万0000円 |
通院2か月+ 入院1か月 | 50万4000円 | 98万0000円 |
通院12か月 入院なし | 93万2000円 | 154万0000円 |
通院10か月+ 入院5か月 | 200万3000円 | 276万0000円 |
そのほかにも、交通事故の被害者が亡くなった際、遺族が請求できる慰謝料の算定や、入院や通院治療のために会社を休まざるを得ず、無給となった場合の休業補償の計算方法においても、弁護士基準と任意保険基準とでは大きな差が発生します。
2-2.後遺症が残ってしまった場合
もしも後遺症が残ってしまった場合、後遺障害の等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料を請求することができます。後遺障害慰謝料については、残った障害の程度(等級)に応じて、基準が定められています。
こちらも入通院慰謝料と同じように、各任意保険会社が定める任意保険会社基準と弁護士が利用する弁護士基準とでは、金額に大きな開きがあり、認定された等級が重いほどその差額は顕著なものとなります。
後遺障害慰謝料の算定基準の違い(一例) | |||
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等級 | 後遺障害例 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
第1級 (介護なし) | 両目の失明 両腕のひじ関節以上の損失など | 1850万円 | 2800万円 |
第14級 | むち打ち症状など | 45万円 | 110万円 |
以上をまとめますと、交通事故の被害に遭った場合、入通院日数が長ければ長いほど、後遺障害が重いほど、保険会社の示談代行サービスではなく、弁護士に依頼した方が、慰謝料などの賠償金を増額が期待できるのです。
交通事故の被害に遭った場合、警察に通報し、保険会社に連絡し、適切な治療を受けることは、皆さんお分かりかと思います。
しかし、弁護士が示談交渉を行うと慰謝料などの損害賠償金の増額が期待できるということは、あまり知られていません。
そして、弁護士費用特約に加入している場合は、弁護士費用を負担する心配もなくなるのです。
自分や家族が交通事故の被害に遭った場合、一度は弁護士に相談してみることをおすすめします。
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取扱業務(交通事故)