これまで、電動キックボードの運転時には、原付バイクなどの免許が必要でした。しかし、2023年7月1日から施行される改正道路交通法により、16歳以上であれば、公道で電動キックボードを運転するときの免許が不要となり、ヘルメットの着用が任意になるなど、大きな規制緩和が実施されます。
これにより、同日以降は、免許不携帯でも、ヘルメットを着用していなくても、交通違反にはならなくなります。
ただし、免許なしで電動キックボードを運転する場合には、一定の条件があるため、注意が必要です。
そこで、今回のコラムでは、道路交通法の改正ポイントや、電動キックボードで走行中に交通事故を起こした(遭った)場合の対処方法などを、交通事故に詳しい弁護士が解説していきます。
改正道路交通法における、電動キックボードに関するポイントは次の通りです。
改正前には、電動キックボードを運転する際には、原付免許(定格出力0.60キロワット超の場合は普通自動二輪免許)が必要でした。
しかし、道路交通法の改正により、電動キックボードを運転する際には、運転免許を取得する必要がなくなります(改正道路交通法第84条1項)。
ただし、以下に解説する「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」に該当する電動キックボードを運転するときに限られます。
改正前では、電動キックボードの分類は、「原動機付自転車」、つまり原付バイクと同じ位置付けでした。
しかし、今回の改正により、電動キックボードのうち、一定の要件を満たす場合は、「特定小型原動機付自転車」という位置付けに変更されます。
そして、特定小型原付の要件は、次の通りです。
以上の要件を満たしている電動キックボードの場合には、規制緩和の対象となります。
免許なしで運転するためには、特定小型原付の要件を満たす電動キックボードで運転することが必要のため、自分の電動キックボードが要件を満たしているか、事前によく確認するようにしましょう。
なお、特定小型原付の要件④にある「保安部品」とは、以下のものが挙げられますので、必要な保安部品を備えるようにしましょう。
改正前には、電動キックボードは原付バイクと同じ扱いであったため、車道を走行する必要がありました。そのため、自転車道の走行は認められていませんでした。
しかし、今回の改正により、特定小型原付の分類になる電動キックボードは、自転車道を走行できるようになります(改正道路交通法第17条3項)。
加えて、原則として許可されていなかった路側帯の通行についても、今回の改正により、著しく歩行者の通行を妨げる場合を除いて、認められます(改正道路交通法第17条の3)。
自転車道・路側帯の走行が認められることに加えて、特定小型原付の要件を満たす電動キックボードであれば、次の条件を満たした場合に、歩道の走行も認められるようになります。
現在、電動キックボードを運転するときには、ヘルメットを必ず着用しなければなりませんが、今回の改正により、ヘルメットの着用が任意(努力義務)に緩和されます。
これにより、ヘルメットを着用していなくても、交通違反や罰則の対象にはならなくなります。
しかし、安全のためにも、ヘルメットの着用が推奨されるでしょう。
2023年7月1日以降は、上記の条件を満たし、16歳以上であれば、免許がなく、ヘルメットを着用せずに運転しても、これ自体は交通違反の対象にはなりません。
しかし、一時停止の無視、信号無視、わき見運転(携帯電話の操作を含む)などを行った場合には、違反の対象となります。
また、前述した保安部品が欠けている電動キックボードで運転している場合にも、整備不良車両運転として交通違反の対象になります。
この場合、3か月以下の懲役、または、5万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、電動キックボードを運転する場合も、自賠責保険への加入が義務付けられています。
もし、自賠責保険に未加入の場合に電動キックボードを運転していた場合には、1年以下の懲役、または、50万円以下の罰金(自動車損害賠償保障法第86条の3)を科される可能性があるため、必ず加入しましょう。
ここからは、電動キックボードを運転中に事故を起こした(遭った)場合の流れを解説します。
電動キックボードでは、自転車道や路側帯、歩道を走行することができるようになるため、自転車や歩行者との接触が予想されます。
また、電動キックボードとはいえ、速い速度が出る場合がありますから、相手にケガを負わせてしまうこともあるでしょう。
もし、電動キックボードを運転中に交通事故を起こし、相手にケガを負わせてしまったら、発生したさまざまな損害を賠償しなければなりません。
具体的には、被害者の治療費を負担したり、休業損害や慰謝料なども支払うことになります。また、被害の程度が大きく、後遺障害が残った場合や、被害者が亡くなった場合には、それぞれに関する慰謝料や逸失利益も補償する必要があります。
なお、これらの損害賠償は、加入している保険(自賠責保険・任意保険)から賄われます。
また、電動キックボードを運転する際は自賠責保険の加入義務がありますが、任意保険への加入は運転者の判断に委ねられています。
しかし、自賠責保険では必要最小限度の補償を目的としているため、支払われる賠償金に上限があります。
もしも、任意保険に未加入の場合、上限を超える賠償金は自己負担することになります。
事故の程度によっては、被害者に大きなケガを負わせてしまう場合も考えられますので、任意保険に加入しておくことをおすすめします。
今度は反対に、電動キックボードを運転中に交通事故の被害に遭った場合を考えていきます。
電動キックボードも、基本的には車道を走行することになります。
車やバイクと同じ車道を走行することになりますから、交通事故の危険性が高いと考えられます。
もし、電動キックボードの運転中に交通事故の被害に遭い、ケガを負った場合には、相手方に治療費や休業損害、慰謝料などを請求することができます。
事故に遭った直後は、病院の整形外科を受診して医師の診察や治療を受けましょう。たとえ、大きな外傷が無くても、病院に行くことが重要なポイントです。
電動キックボードのタイヤは、5~6インチが主流となっており、他の車両に比べて、非常に小さいです。
そのため、自転車では越えられるような段差であっても、電動キックボードではつまずいてしまうことや、誤った操作をして転倒するケースが考えられます。
また、速度を制御できずに、電柱や建物などに衝突してしまうこともあるでしょう。
このような自損事故の場合、自分が加入している任意保険を使うことができます。
自賠責保険は、他人に損害を与えた事故のみ補償の対象となります。
そのため、自賠責保険のみに加入している場合には、自損事故を起こして自分がケガをしたときの補償、電動キックボードや損壊した物の修理費用、自分の持ち物が破損した場合の補償は対象となりませんので、注意が必要です。
ただし、すでに自動車保険(任意保険)に加入している場合は、新たに任意保険に加入する必要はありません。
加入中の自動車保険の内容を確認して、もし補償内容に不足がある場合は、「ファミリーバイク特約」などを付けることをおすすめします。
ファミリーバイク特約は、125cc以下の原付バイクが対象とされており、電動キックボードも特約の対象になります。
ただし、定格出力が1,000W以下の電動キックボードが対象となる点に注意が必要です。
また、加入者の配偶者や同居の親族なども特約の対象者となりますので、補償対象が幅広いという特徴もあります。
このように、任意保険にはさまざまなメリットがありますので、万が一のためにも任意保険への加入を検討するとよいでしょう。
電動キックボードで事故に遭った場合は、加害者側とさまざまな交渉をしていくことになります。
また、賠償金額の提示は、加害者の保険会社から行われることが一般的です。
被害者の方は、提示された金額が正しいかどうかを自分で判断しなければなりません。
もし、提示された金額が正しいかわからないといったようなお悩みがあるときには、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故に強い弁護士であれば、交通事故の法的判断に精通しており、弁護士基準という法的に最大限の請求が可能な算定基準により、休業損害や慰謝料などの賠償金を計算します。
これにより、保険会社からの提示金額よりも、賠償金の増額が期待できます。
弁護士法人プロテクトスタンスには、交通事故に詳しい弁護士が数多く在籍しており、交通事故のみを扱う専属部署もございます。
交通事故についてお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。