皆さま、こんにちは。
いつも弊事務所のコラムをお読みいただきありがとうございます。
今回は、交通事故、労働災害等において生じうる「高次脳機能障害」という障害についてお話ししたいと思います。
高次脳機能障害は、脳への受傷によって生じる障害で、記憶障害や注意障害、性格の変化など、様々な形となってあらわれます。
骨折のようにレントゲン等で異常があればわかる「目に見える傷病」ではない場合が多く、その苦しさが他の人にとって認識しづらいという特徴を有した隠れた障害と言われています。
この障害は、脳卒中等の疾病に伴って発生するケース以外にも、「労働災害」や「交通事故」による外傷性脳損傷等によって生じるケースが多くあります。
そして、隠れた障害であることから、後遺障害として正当な賠償が受けにくい点で大きな問題があります。
そこで、今回は、高次脳機能障害の症状の詳細をご紹介させていただき、弁護士がどのような形でサポートできるかについて参考にしていただければ幸いです。
高次脳機能障害の主要な症状としては、以下の8つが挙げられます。
①記憶障害
「記銘力」(出来事を覚えておく力)に支障が出ることが多く、約束を忘れることが多くなるといった支障がでてきます。
②注意力障害
注意が散漫になったり、逆に没頭しすぎて2つの作業を同時並行でできない症状等がこれにあたります。
③半側空間無視(USN)
たとえば、左側にある食べ物が認識できず食べ残したり、真ん中を正確に認識できず、偏って歩く等がこの症状にあたります。
④遂行機能障害
段取りよく計画を実行できない等の症状がこれにあたります。
⑤社会的行動障害
怒りやすくなったり、幼児返りをする等の症状がこれにあたります。
⑥失行症
普段は使えていた日用品が、うまく使用できなくなる等の症状がこれにあたります。
⑦失認症
人の顔が皆同じように見えて区別できない症状等がこれにあたります。
⑧失語症
話す、書く、聞く、読む等の行為が困難になるケースがあります。
高次脳機能障害は、後遺障害第1級、2級、3級、5級、7級、9級に該当する可能性があり、その認定された件数の半分以上を、5級、7級、9級の3等級が占めます(2011年度)。
しかし、労災や交通事故でこのような障害が残っていても、上述のように画像等で現れない障害であることから、たり、まったく認定されなかったりと、正当な賠償を受けにくいケースが多くあります。
高次脳機能障害の後遺障害等級の認定は、意思疎通や問題解決能力、作業負荷への耐久力や社会的行動力の低下の程度や、MRI画像等の客観的な資料、急性期の資料 (JCSやGCSといった意識レベルの指標)等といった様々な事情をもとに判断されますが、主治医が適切な診断結果や後遺障害等級審査に必要な記述などを記載していないケースもあり、特に、5級から9級においては、弁護士が資料を追加で収集・提示することで、より上の等級が認められる事例も散見されます。
そこで、医師と患者と弁護士とが、面談や医療照会等を通じて協調し、適切な診断書の記載や認知リハビリ等の適切な医療の実施を相互に確認しながら進めることで、できる限り正当な賠償を受けられる環境づくりをしていくことが重要です。
弊事務所では、このような高次脳機能障害の事案を含めた交通事故問題について、症状固定(治療終了)の前の段階から主治医にアプローチをしていくといった総合的なご提案をさせていただいており、幅広い実績やノウハウを有しております。まずはお気軽にご連絡ください。
参考文献:自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)」2011年3月4日