全国の自治体や法テラスが行っている法律相談がやっと再開されたばかりで、あまり表立ってはいませんが、新型コロナウィルスは、法律相談の分野においても様々な影響を及ぼしているようです。具体的にみていきましょう。
警察庁の統計によれば、4月に全国で起きた交通事故件数は、2万805件で、昨年の同じ時期に比べ1万件以上減少し、1か月あたりの交通事故件数としては過去最少との調査結果が公表されています。
また、都内に限定すると、小池東京都知事が外出自粛を要請した3月25日から4月26日までの間に、都内で発生した交通事故の件数は1808件で、前年の2019年の同時期に比べ、約4割以上減少したことが明らかとなっています。
これらの数値は、緊急事態宣言や知事などの外出自粛の要請に応じた結果、交通量が大幅に減少したためとされています。
しかし、その一方で、東京や大阪などの都市部では、外出自粛の結果、普段渋滞している道路が空いており、スピード違反や無理な運転をするドライバーが増えることで、昨年の同じ時期より死亡事故や重大事故が増加したとされています。
交通事故の被害に遭った場合、被害者は、加害者本人ではなく、加害者が加入している保険会社と治療費や慰謝料などの示談交渉を行うことがほとんどです。交通事故で発生した慰謝料などの計算方法については、法律上最低限度の制限が定められている自賠責基準、任意保険の各会社が独自に定めている任意保険基準、そして裁判所でも採用され、弁護士が使用する弁護士基準の3種類の基準が存在します。
同じケガでも、自賠責基準を採用するか、弁護士基準を採用するかによって被害者がもらえる慰謝料や逸失利益は大きく異なります。一般的に、相手方保険会社が提示してくる示談金額(任意保険基準)は、自賠責基準に近い金額、つまり法律上最低限度の金額にすぎないことがほとんどです。
ケガの度合いが大きくなれば大きくなるほど、弁護士基準、つまり法律上請求できる金額と、相手方保険会社から提示される金額には隔たりが大きくなります。まずは、相手方から金額が提示されたら、弁護士に相談することをおすすめします。
コロナ禍により業績が悪化したあるいは緊急事態宣言を受けて、自宅待機を命じられたが、「その分の給与は支払われない」といわれたという相談も増えています。
法律上、企業側の判断で休業する場合、労働者は、その間の賃金を休業手当(最低平均給与の60%)として請求できるとされています。しかし、その一方で、休業の理由が不可抗力である場合には、休業手当てを支払う義務はありません。
不可抗力があるかどうかについては、会社や業種ごとに判断しなければなりませんが、少なくとも「新型コロナウィルスのせい」だけでは不可抗力には当たらないとされています。具体的には、テレワークの導入や他替手段の導入など企業側が休業回避の努力をしてもなお、休業せざるを得ない状態になってはじめて、休業する労働者への賃金を支払わなくてもよいとされます。
つまり、テレワークなどにより自宅で仕事ができる業種でもあるにも関わらず、在宅勤務ではなく自宅待機を命じられた場合、企業側は休業手当を支払わなければならない可能性があります。
これ以外にも休業せざるを得ない企業や労働者の生活を守るため、様々な助成措置が存在します。しかし、この諸手続きは、企業の積極的な導入がまだ進んでおらず、問題視されています。
これらの手続きは書類の取り寄せなど、手続きが複雑ですし、どの助成金制度を利用できるか分からないこともあるかと思います。コロナ禍により資金繰りに困っている方はお早目にご相談ください。
新型コロナウィルスの拡大防止策として在宅勤務や外出自粛をした結果、家庭環境にも影響が出ると言われています。
つまり、離婚と家庭内暴力(DV)の増加です。
在宅勤務の導入や外出自粛の結果、一緒に過ごす時間が増え、互いの価値観の違いやすれ違いが生じ、離婚や多大なストレスから家庭内暴力(DV)に発展するケースが増加することが指摘されています。
実際、SNS上では、夫婦間の互いの愚痴に関する投稿が増加しています。また、離婚に関する相談は増加しておりますし、1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災時にも離婚相談の件数は、震災前の2~3倍以上増加し、震災離婚ともよばれた前提がありますので、今回も同様のことが予想されます。
離婚は、当事者同士の話し合いですと感情論になってしまうことも多く、解決に時間がかかることも少なくありません。夫婦の間に子どもがいる場合は、子どもが健全に成長するための親権や養育費、面会交流など決めなければいけない事柄が多数あります。また、DVが発生した場合は迅速に解決しないと、家族や自身の生命にすら影響を及ぼすこともあります。お早目にご相談ください。
上記以外でも、コロナ禍の影響で、イベント等の契約のキャンセルをしたところ、多額のキャンセル料金を請求されたといったトラブルや、新型コロナウィルスの影響で、子どもとの面会交流が行われなかったという相談が数多く発生しています。
その他、4月の法律コラムでお伝えした住宅ローンが支払えないといった問題もあります。今は、やっと緊急事態宣言が解除された自治体がある状況に過ぎず、生活を立て直すことばかりに目が行きがちです。しかし、新型コロナウィルスによる法律問題でお困りの方は、手遅れになる前にお早目にお問い合わせください。