毎週のように、週刊誌には芸能人や有名人の不倫に関する記事が掲載されています。つい最近も、オリンピック選手や有名ミュージシャンの不倫騒動が話題となりました。
特に離婚が成立したとき、これらの記事で必ず話題になるのが慰謝料の金額です。
はたして本当に、浮気や不倫が発生した場合、慰謝料は請求できるのでしょうか。また、仮に請求できるとなった場合、誰に請求できて、いくらぐらい請求できるものなのでしょうか。
今回のコラムはこれらをテーマに取り上げたいと思います。
1-1.浮気や不倫って何?
浮気や不倫という言葉は、交際中あるいは結婚中にもかかわらず、配偶者以外の異性と交際することを指して使われることが一般的です。
また、それ以外でも不倫相手が独身の場合は浮気、既婚者ならば不倫と区分したり、本気度によって浮気や不倫を使い分けたりすることもあるようです。
しかし、日常的に使用される「浮気」や「不倫」。実は、これらの用語は法律用語ではありません。
法律用語では、浮気や不倫のことを「不貞行為」といいます。もう少し具体的にいうと、既婚者が配偶者以外の異性と自由な意思にもとづいて、性的関係・肉体関係を持つことを不貞行為とよびます。
そして、不貞行為は、平穏な婚姻生活を害したとして、裁判上の離婚原因(法定離婚事由)になったり、精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求することができます。これがいわゆる、浮気・不倫の慰謝料とよばれる問題です。
1-2.誰が誰に対して請求するのか?
配偶者に浮気や不倫をされた側が請求者となります。たとえば、夫が浮気・不倫をした場合、妻が請求者となり、反対に、妻が浮気・不倫をした場合には、夫が請求者となります。
きちんとした統計があるわけではありませんが、妻が妊娠や子育てをしているとき、夫がつい浮気や不倫に走ってしまうということが多いようです。
また、誰に請求するかという点については、浮気や不倫をした配偶者に請求する場合や、不倫相手に請求する場合、配偶者とその不倫相手の両方に請求する場合の3パターンがあります。
なお、配偶者に対して請求する場合は、慰謝料だけではなく離婚の請求をすることもあります。
1-3.どのように請求するのか?いつまでに請求するのか?
慰謝料は口頭で請求する場合もあれば、内容証明郵便など形が残る形式で請求する場合もあります。
弁護士が本人の代わりに請求する場合は、「慰謝料の請求など受けていない」というような後日のトラブルを防ぐために、内容証明郵便を利用することが圧倒的に多いです。
また、相手方と話し合いで解決できなかった場合は、裁判を起こし、裁判所から訴状を送ることもありますし、場合によっては、事前の交渉を行わらず、いきなり裁判を起こすこともあります。
さらに、慰謝料の請求には時効があります。
1-4.慰謝料の相場は?どれくらい請求できるのか?
次に、慰謝料と一口に言っても、いくらくらいが相場なのでしょうか。
任意での交渉により解決できず、裁判することになった場合、裁判官は下記の要素を総合的に判断して、おおよその慰謝料を算出します。
このうち、最も重要視されるのが 1 です。浮気や不倫、つまり肉体関係をもった期間や回数が長ければ長いほど、慰謝料の金額が高くなります。
一方、たとえ肉体関係を持ってしまったとしても、既婚者であることを知らなかったとか、既婚者であることを知って関係を終わらせた場合には、慰謝料の減額の要素となりえます。
裁判では、上記以外にも、浮気相手の資産状況などの様々な要素を考慮して、慰謝料を算出しますが、おおよその慰謝料は数十万円から300万円程度であることが多いようです。
よく、芸能人の浮気・不倫問題で、慰謝料が何千万円、何億円と報道されることもありますが、これは離婚のときの財産分与や、精神的な慰謝料、その他、不倫問題がきっかけでCMなどを打ち切られたときの違約金なども含まれています。
普通のサラリーマン家庭の不倫では、まず考えられない金額ですので、芸能人の報道の金額に踊らされないようにしましょう。
浮気や不倫の慰謝料問題で一番大切になるのが、肉体関係の有無です。それでは、金額はともかく、本当に肉体関係の有無で慰謝料の存否が決まってしまうのでしょうか。
ここで、結果が相反する二つの裁判例をご紹介しましょう。
(1)東京地裁平成26年4月14日判決
水商売の従業員がいわゆる「枕営業」として長期間にわたり顧客と性交渉を繰り返した行為が不法行為にあたらないとした裁判例です。
性風俗や水商売の従業員が、継続して店に通ってもらうために、肉体関係をもってしまう、つまり、既婚者の顧客と浮気・不倫をしてしまうことは少なくありません。
しかし、上記の裁判例では、不倫相手の従業員が恋愛感情をもって肉体関係をもったわけではないとして、相手の配偶者からの慰謝料請求を認めませんでした。
(2)東京地裁平成20年12月5日判決
肉体関係があったとは認められないが、夫が不倫相手と結婚を約束し交際を続けたため、夫婦関係が破綻してしまい、慰謝料の存在が認められた裁判例です。
こちらは、肉体関係の有無は明らかではなかったものの、夫と不倫相手が結婚を約束し、親密な交際を続けたことが慰謝料の発生する要因と判断されました。
つまり、
(1)では、肉体関係はあったが、慰謝料は認められなかった
(2)では、肉体関係はなかったが、慰謝料の存在が認められた
という真逆の結論が出たのです。
このように、浮気や不倫の慰謝料は、単純に肉体関係の有無だけが重要視されるわけではないようです。では、当事者はどのようにしたらよいのでしょうか。
浮気や不倫における慰謝料問題は、請求をする側・される側の両方とも、弁護士に相談すべきです。
このコラムをお読みの方の中には、「浮気とか不倫とかプライベートの問題なので恥ずかしい」とか、「慰謝料の相場が数十万円から300万円程度ならば、その間の金額で解決すればいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。
数十万円から300万円という金額は、あくまでも裁判で解決した場合の目安にすぎません。
また、浮気や不倫の慰謝料問題は、ほかの法律問題に比べ、当事者同士が感情的になっているケースが多く、当事者同士だけの話し合いですと、かえって事態が深刻化したり長期化したりすることが非常に多いのです。
その点、法律と交渉のプロフェッショナルである弁護士に依頼すれば、
などのメリットがあります。
とくに、慰謝料を請求されている側は、「自身の大事な配偶者を奪われた」という気持ちから、法外な金額で慰謝料を請求されているケースも少なくなく、弁護士に依頼することにより、当初の金額から数百万円、数十万円という減額が成功した解決事例も少なくありません。
浮気や不倫問題で、お困りの方は、弊事務所までご依頼ください。
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