新型コロナウイルスの影響もあり、配達時に荷物を直接手渡しせずに玄関先など所定の場所に置く「置き配」サービスが広がっています。
不在による再配達の手間を省けることから利用機会が急増していますが、置かれた配達物の盗難事件もまた相次いでいます。
置き配商品を専門に狙った連続盗難事件がニュースになったことも記憶に新しいでしょう。中には、無人の玄関前に置いてある荷物を見て「つい出来心で」置き配商品に手が伸びてしまった、という方もいるかもしれません。
そこで今回のコラムでは、置き配をはじめ、他人の郵便物を意図的に持ち去る行為がどのような罪に該当するのか、弁護士が解説します。
結論から言うと、置き配商品の持ち去りは悪質な窃盗にあたり、「つい出来心」ではすまされません。重罪となる可能性もあるため絶対にやってはいけない行為です。
繰り返しますが、置き配商品の持ち去りは「窃盗罪」に該当します。法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となる犯罪です(刑法第235条)。
Amazonなどの大手通販会社は、置き配による破損や盗難のリスクをあらかじめ想定の範疇としているため、仮に配送済み荷物の紛失が発生しても補償の対象となる場合がほとんどです。
また、配送業者である日本郵便が置き配の盗難保険を設けるなど、様々な盗難被害の防止策が検討されています。
こういった背景から「自分が置き配商品を持ち去ってもどうせ補償されるから大丈夫」と考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、アパートやマンションをはじめ、街中いたるところに監視カメラが設置されている昨今では、必ず窃盗は見つかります。
そのため、出来心で置き配商品を持ち去ってしまった場合、窃盗罪による逮捕となる可能性が非常に高いでしょう。
窃盗罪について定めた刑法第235条では、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
そして、窃盗罪が成立するには、次の3つの構成要件を満たす必要があります。
この点、置き配商品の持ち去りは、上記3点をすべて満たしていることから、刑法上「窃盗罪」として扱われます。
たとえば、集合住宅のアパートやマンションで、玄関前などに置かれた配送物を“つい”持ち去ってしまったとします。このようなケースで「窃盗罪」が明るみになり、犯人逮捕に至るにはどのような過程を踏むのでしょうか。
まず、荷物の配送遅延や紛失を懸念した被害者が配送元に問い合わせを行います。Amazonなどの大手通販サイトの場合、配送した証拠として置かれた荷物の写真を撮影することもあるため、盗難による紛失であることは早ければ数時間で判明します。
その後、被害者が窃盗事件として警察に通報します。管轄警察署の警察官が現場検証し、その後被害届が提出されます。通報から被害届が受理されるまで、こちらも早ければ数時間で完了します。
したがって、被害者が盗難に気が付いてから24時間以内には、窃盗事件として警察の捜査対象となります。
その後、警察が捜査を進める中でアパートやマンションの管理会社から監視カメラの映像などをチェックします。およそ数週間から数か月の捜査期間を経て、やがて逮捕に至ることになります。
インターネット上では「窃盗くらいじゃ警察は捜査なんてしない」といった無責任な意見もあります。
しかし、決してそんなことはありません。
生活のデジタル化と捜査テクノロジーは日進月歩で進化し続けており、窃盗事件の証拠はすぐに集めることができます。
実際に、令和2年度の犯罪白書によれば、窃盗罪の検挙率はおおよそ30%強となっており、約3人に1人は確実に逮捕されているというデータがあります。
もし、あなたがつい出来心で置き配商品の持ち去りを考えてしまうことがあれば、この事実をもう一度思い出してください。
万が一、つい出来心で置き配された物を盗んでしまった場合は、警察からの逮捕に怯える毎日を過ごすことになります。このような場合には、弁護士にご相談ください。
窃盗罪は盗んだ後に物を返しても成立しますし、被害者からの申告がなくても処罰されます(非申告罪)。
そのため、もし、窃盗の事実があるのであれば、逮捕・勾留や刑事裁判を避けるためにも、可能な限り早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が被害者への謝罪と示談交渉を行い、不起訴処分を勝ち取るための弁護活動を行います。被害者との示談が成立すれば、不起訴処分になる可能性が高くなりますし、不起訴処分になれば前科が付くこともありません。
今回のコラムでは、置き配商品の持ち去りは窃盗罪に該当する、ということについて解説しました。
証拠が残りやすい窃盗罪は検挙率が高く、逮捕される可能性が非常に高い犯罪です。
もし、あなたに置き配商品や郵便物を持ち去ったような事実があるのなら、一日も早く改心し、行動を起こすことで、最悪の事態を避けるようにしましょう。
被害者への謝罪や示談交渉、警察からの取り調べへの対応などを1人で行うことは困難です。できる限り早く刑事事件に強い弁護士に相談し、最適な解決策を図ることをおすすめします。