第二波がいつ到来してもおかしくない新型コロナウィルス。新型コロナウィルスが、様々な業種に悪影響を及ぼしていることはご存知のことと思います。
飲食業界や観光業界はもちろんのこと、その影響は不動産業界や引越し業界にも及んでいます。都道府県間の移動も自粛するよう自治体から要請がでていることもあり、本来ならば引っ越しシーズンである4月の引っ越し依頼は、例年の20~30%前後であったようです。
そのほか、海外からの留学生や労働者などが在留資格を失った事情や、他人と3密状態で暮らす状態を避けるため、シェアハウス離れが増えているようです。
シェアハウスといえば、2018年、金融庁までも巻き込んだ、スルガ銀行からの不正・過大な融資により莫大な借り入れをさせられた挙句、適正価格以上の値段でシェアハウスを購入させられた「かぼちゃの馬車事件」を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
弊事務所へも、かぼちゃの馬車事件で、「ローンが支払えない」などの相談が相次いでおります。そこで、今回は、かぼちゃの馬車事件の現状についてお伝えしたいと思います。
かぼちゃの馬車とは、東京に拠点を置き、主にシェアハウス事業を行っていたスマートデイズという会社が運営していた女性専用のシェアハウスの名前です。
スマートデイズが運営するかぼちゃの馬車は、新築・保証人不要、家具家電付きを謳い文句にし、上京してきた女性をターゲットにし、事業展開を行ってまいりました。
また、スマートデイズは、シェアハウスの物件については、家賃収入を考えているサラリーマンなどを対象に、サブリース契約をする手法を採用しておりました。つまり、資産運用として家賃収入を考えている人が、新築建物を建て、その後、スマートデイズがシェアハウスの管理会社として建物の管理を行います。
そして入居者からスマートデイズに支払われた家賃収入から諸経費が引かれた残金がオーナーの手元に支払われるという仕組みです。
オーナーからすれば、最初は建物を建築するために住宅ローンを組むなど、多額の出費が発生します。しかし、その後は、建物の管理や運営を会社に任せ、建物建築のためのローンの返済も家賃収入でやがて完済され、完済後の家賃収入は、プラス収支となります。この不動産投資の方法は、もちろん合法であり、近年注目を浴びている資産運用方法の一つです。
しかし、スマートデイズはこのシェアハウスの運営がうまくいかず、2018年に破産をしてしまいました。オーナーからすれば、多額の住宅ローンだけが残る一方で、家賃収入がなくなるあるいは管理会社を変更しなければならない、という負の財産のみが残ってしまいました。
この事件が問題視されるのは、スマートデイズが破産したこと自体ではなく、オーナーが建物を建築するために組んでいた住宅ローン会社がスルガ銀行であり、同行がスマートデイズと結託して、不正な融資を行っていた点にあります。
つまり、スルガ銀行はシェアハウス建築のための住宅ローン借り入れ申し込み者の書類や貯金残高や資産目録の数値を改ざんして、現状よりはるかに資産を保有しているかのよう見せかけ、融資の決済が得られやすくなるなどの不正行為を行いました。
また、実勢相場よりも高く、必要以上の金額の住宅ローンを組まされたケースもありました。
これらの銀行の行為により、返済可能金額をはるかに超えた住宅ローンを組まされたオーナーが多数存在しました。そして、スマートデイズの破産により、家賃収入が滞り、シェアハウス建築のための住宅ローン返済の目途を失ったオーナーが相次ぎ、問題が大きく報道されました。被害者の中には、元Jリーガーも何人かいるようです。
2019年9月の時点でスルガ銀行のシェアハウス関連の住宅ローンの延滞率は40%にもなることですので、現時点で返済に行き詰っている方はもっと多くいることが予想されます。
また、返済に行き詰まるだけではなく、誠に残念ながら、自殺したり、精神的疾患を発症してしまったオーナーもいらっしゃいます。
事態を重くみた金融庁は、スルガ進行に対し立ち入り調査を行い、同行の不正が実際に行われたことを確認し、2018年不動産投資向けの新規融資を6か月禁じるという大変重い業務命令を下しました。
一部の被害者らは、スルガ銀行に対し、不正融資によって負った借金の免除や損害賠償などを求める裁判を起こし、解決の道を探ってきました。
度重なる裁判所からの解決の勧告にしたがい、議論が続けられてきましたが、2020年3月に、和解が成立しました。
その具体的な内容は、
オーナーが所有しているシェアハウス物件を手放すことを条件に、スルガ銀行が、オーナーのシェアハウス関連の住宅ローンの残債務を免除するというものです。
たとえば、スルガ銀行にシェアハウス関連の住宅ローンの残債務が1億円あったとします。この場合、
※お金の代わりに、何か別の物(今回でいえばシェアハウス)を債務の支払いに充てることを代物弁済(だいぶつべんさい)と呼びます。
今回の騒動でまだ解決に至ってない被害者は、全国に1,000人ほどいるといわれています。スルガ銀行は、これらの被害者に対しても、裁判で和解が成立した被害者と同様の処置を行うとしています。
しかし、これまでもスルガ銀行は、元本を一部あるいは全部免除する、利息を低くするといった指針を示しておきながら、誠意に対応してこなかった経緯があります。
また、スルガ銀行は和解に応じるためには、裁判に調停を申し立てることを条件としています。つまり、調停では、様々な法的根拠にもとづいた主張を行う必要があり、弁護士に依頼するのが確実です。
それ以外にも、3月に成立した内容ですべての問題が解決されたわけではなく、
といった様々な疑問が残されています。
さらに、かぼちゃの馬車のオーナーを狙った二次被害も発生しております。かぼちゃの馬車のオーナーの方は、スルガ銀行側が和解に応じる内にお早目に弁護士に相談すべきといえるでしょう。
弊事務所は、スルガ銀行のシェアハウスのオーナーからのご相談に対応するため、被害対策専門チームを設けるなど積極的に取り組んでおります。どうぞご遠慮なく、お問い合わせください。
※お問合せ頂く際には、「スルガ銀行のシェアハウスの件で」とお伝えください。